思い出と・・・
夏樹の突然の言葉に驚きしか残っていなかった。無駄にカフェに居座ってもいけないと思って出ても何処かすっきりと晴れるものでもない。そんなくだらないことに費やす時間を今書いている小説につぎ込まないといけないのも百も承知だ。三枝は少し込み合った地下鉄へと乗った。そして帰り道にあるコンビニへといった。きれいに羅列されているところと賞味期限が近いということで少し狭いところで散らかっている。横目に見ても変わらない。漫画雑誌を立ち読みをしている若い男性が立っていた。お金をかけて読むより立ち読みで済ますこともあるのだろう。三枝はかごを持たずにチューハイを持った。総菜のところに行ってチーズを買った。それくらいでいい。レジに行くと淡々と対応をして終わる。そして、自分の家へと帰った。家といっても大きなマンションというわけでもない。一応はマンションと書かれていたところに入って長い。大して執着もあるわけではないからだ。そのまま、野垂れこむようにソファに座った。オートロックがあるほうがいいといわれているが、今やオートロックですら疑わしいといってもいいのではないのか。インターホンにカメラがある部屋がいいと思って此処に至る。
ため息をつく。三枝にとって今日あったことが驚きが付きまとっていて・・・。チューハイをテレビの前の机に置いた。チーズも共に。書庫としてとしか使っていない部屋へと向かった。勉強のために買った小説があふれかえってしまっている。仕事部屋にも入れたくないので別にしている。書庫に入ると落ち着くのだ。寝室は仕事部屋と共通になっていたほうが使い勝手がいいためだ。書庫には回転いすしか入れていない。思い入れのある小説は別の棚に入れるようにしている。夏樹はそういえば、本が好きとも言っていなかったことを思い出した。
「別に本が好きっていうわけじゃないのよ。・・・本を書くにも裏を取らないといけないのだから。弘樹の書いている姿がとても好きなの。いろいろと現場に行くことを怠らない姿が・・・。」
夏樹はやけにそんな言葉を言うのをこだわっていたのを思い出した。大学にいたころに小説を持ち歩く柄じゃないと自分でも言っていたし、真面目ですというような行動も意図的にするのは嫌っていた。そのままの自分を受け入れる人物を探していたのかもしれないと今更ながら思い出した。遠い昔とも言わないが、思い出に浸るなんて言うのを久しぶりにした気がした。そこまで追われていたのかもしれない。