点の事件
「お前のことだからすっきょんなことを言わないから、鑑識に探ってもらうよ。」
「そうしてくれ。」
草間は鑑識に行くために応接室へと出た。残ったのは三枝と上条だった。マグカップにはかすかにコーヒーのにおいが漂った。
「草間はよくやってますか?」
「えぇ、余計に思うんですよね。なんで未解決事件部という小さな部署にいることがあいつのためになるとも思えないんです。捜査一課として現状動いている事件に携わっているほうが身のためだと思うんです。」
上条は仕事がないときには早く帰れと催促をしているのだが、独身であって家族もいないからもう少し残るといって過去の資料を探っているのだという。捜査一課にも欲しがっただろうから。三枝にとっては無駄ではない才能があったのではないかと思えてしまう。
「上条さんに聞きたいことがあったんですよ。・・・高橋権現の兄の事件の資料って読めないですか?」
「いいですよ。本当に思います。貴方が警察というものを選ばなかったのかを・・・。」
髙橋権現の兄の死を事故として処理されていた。権現の兄は医者をしていることもあってか高橋製薬に嫁ぐつもりもないと以前から口うるさく言っていたらしい。だが、父親はそれをよしとしなかったのだ。それが原因として含まれていたが全くもって何もつながらなかった。権現の兄の近しい人物として窪塚公子と鈴木孝則と書かれていた。
「これって・・・。」
「先生のご察しの通り、窪塚鉄工所の社長夫人と鈴木卓、詩織兄妹の父親です。グルだった可能性もあったんですけど証拠も浮かび上がってこないこともあってあきらめたんです。」
警察は権現が主犯として動いていた可能性も疑ったのだが、高橋製薬のその時の社長が警察に圧力をかけたのだ。それによって動くことができず、封じ込められてしまったのだ。殺人事件というのは手は違ったとしても連続殺人事件であることが核心がついた。鈴木孝則に至ってはこの事件で容疑をかけられたことによって会社をクビになっている。正社員として働いていたらしいのだが、数年前に死んだというのだ。窪塚公子も同じだった。
「その件はどうなったんですか?」
「全て事故ですよ。それも高橋製薬の圧力であっけなく終わりましたがね。」
髙橋権現は大方高橋絵里、娘を使った可能性があったのだ。だから週刊誌に取り扱われるのが何であっても嫌がったのだ。それならつじつまも合う上に、鈴木卓と詩織兄妹に窪塚紘一が加担しても可笑しくない。




