余韻に楽しむ
三枝は立ち読みをした週刊誌を買った。それに加えて、チューハイを買い、つまみをそろえた。飲んでおきたかった。つまらない理論を考えてしまうのが嫌になってしまうのだ。彼にとっては小説が真実を語ってしまっているのに何処か感じてしまう。たまたま撮った写真に写る幼げな翳りのある瞳の子供がどんな大人になっているかも創造をしたくなかった。
「今日はやけになってます?」
「やけになっているかもしれないな。」
レジをしていた若い男性に声をかけられた。かすかに言い当たられたことが心地よかった。認めないのも大人げないとも思ってしまう。
「そんな日もいいですよ。つまらないことにこだわってしまう日があっても誰も迷惑をかけなければいいんです。だって、人は完璧を追い求めたとしても絶対に完璧になるとは限らないですから。」
「そうだね。君の言う通りだ。」
三枝がそう言って少し笑みを見せると店員も笑顔で返してくれた。彼は誰に話しかけていたのか気づいたのだろうか少し戸惑ってしまっている。彼はすぐに外に出た三枝を追ってきた。
「偉そうなことを言ってすいませんでした。」
「構わないよ。俺はね、弱いときには弱いと認めるのがいいと思っているんだ。それにその弱さを認めるのは恥ずかしいことじゃないと身に染みているからね。」
彼の肩を少したたいた。頭を下げていた彼は肩をたたいたことで顔を上げた。彼は三枝のファンだといった。中学生の時に三枝の小説の授賞式を見たときに驚いたのだ。自分より少し年上の人が大人たちと交じって正論を言っていると思ったのだと。そのことを見て追いかけていくことに決めたと。
「それじゃあ同じ大学の文学部にいるってことか?」
「そうです。ゼミの先生も同じです。ゼミの先生は貴方に大学院まで進んで研究者の道を置いておきたかったといっていました。だから、特別に籍が残ったままだと。」
「そうか。あの先生は厳しいだろう?」
同じゼミならわかっているだろう。厳しい先生の元で知ることがいいと思ったのだ。助言もくれるので厳しいだけじゃないのもわかっている。
「厳しいですけど楽しいです。俺も大学院に行かないといわれているので親と相談して研究の道に進むことになりました。」
「頑張ったってことなんだね。夢に進むのはいいことだよ。厳しい道だったとしてもゼミほどじゃない。」
「あれは一段とすごいですよね。」
読み込んでいないといえないことまで問われるのでかなりの時間が割かれてしまうのだ。それでも読み込むことを得るのでいいことを学んだと。




