告げ人
社長がもっていたファイルを三枝のほうにもって来た。
「彼とはうちの民事の時の弁護士をやってもらっているんだよ。腕はいいのに、捨てられたんだし、俺も取材した1人だからそのお詫びもかねてね。会うならアポを取り付けるよ。弘樹君ならいいって言ってくれる。・・・ちょっと連絡をしてくるから。」
社長はそう言って去っていった。マグカップを置いたままで・・・。荒木はじっと彼のほうを見つめている。社長の妙なところの義理人情が厚いところはよく知っているのだろうか。
「出版社ってごたごたになってしてからが怖いですからね。だから、白馬の王子様だっていうから最初はわからなかったんですよ。けど、話題になった人だったんですぐにわかりました。」
「あったことがあるんですか?」
「えぇ、入ってある程度のことに慣れたら法律の勉強もかねて会いに行くというかじっくりと教えてくれるんですよ。先生もあったでしょ。」
三枝が高校生の時に法律をあらゆるところを教えてもらったのだ。社長の配慮だからと思っていたが、詳しくいくので高校での勉強より興味がわいたのは事実だ。それを伝えたらポケット六法を譲り受けるのではなく、スクリプトに買ってくれたのだ。社長が言ったのは初めて書籍ができた祝いだと思って受け取ってくれと。
「木佐さんがまさか高橋製薬と関係があったとかまでは知らなかったです。」
「でしょうね。俺もです。契約違反をしてまでひどい切り方をしたのは、踏み込まれたくなかったことがあったとしか思えないんですよね。」
髙橋製薬にとっては痛い判断をしている。それにも関わらず、その判断を押し通したのはやはり高橋権現という男の存在がある。娘の不良の事件を隠させておきながら切り捨てたのだ。高校生の時にあったのはきっと弁護士としか会っていなく、名前まで覚えていなかったのだ。高橋製薬の裁判は大ごとにならなかった。マスコミですら抑え込まれたというのだ。
「澄川書店ってある意味ギャンブルですよね。高橋製薬と弁護士の件を取り上げることができたんですから。」
「だとしてもですよ。澄川書店と高橋製薬は裏でやっていたことも考えられないですか。内部告発をした人物がいるということを。」
「弘樹君、正解だよ。秘書課の人が澄川書店に内緒で告発したんだよ。ひどいといってね。社長を辞めさせたかったんだよ。」
社長は当時の社長であった高橋権現をやめさせたかったのだといった。秘書に対してかなり横暴であったこともある。だが、会社としてはそこまで大きくなっていない。内部告発者を探してさらし者にする前にやめたのだ。
「木佐さんがね、会ってもいいって。事件を少し抱えこんでいるみたいだから1週間後に来てほしいとさ。」
「わかりました。」
三枝ははっきりと済んだ声で答えた。




