無縁のつもり
新たな疑惑が生まれたとしか思えなかった。あれほど嫌っていた父親との提携を決めたに近いことで、何か隠したいことでもあるのだろうかと。会社の名前ではなく、小関絵里と打ってみるとある事件が現れた。それは窪塚康がいた不良グループと思われていた組織のリーダーが殺したとされる集団のリーダーではなく、幹部として働いていたことが分かった。少なからず窪塚康とのつながりがあるはずだ。康が脅す相手になっていた可能性もある。今は社長という地位にいるのに、過去のことを掘り起こすのは嫌がるはずだ。特に当事者同士に近い関係だと他の物を掘り起こしかねないのだ。
パソコンと向き合っていると時間というのは過ぎって行ったのだ。カーテンから漏れる明かりで気が付いた。冷蔵庫からコーヒーを取り出した。ブラックコーヒーを飲み干した。苦味が何処か人生の歩みを導いているようでもあって、少しの甘味が人生の甘さを感じてしまうのだ。パソコンをシャットダウンにしてテレビをつけた。天気を伝えたり、ゴシップを伝えたりしている。その中に政治家の疑惑も含まれていた。疑惑が週刊誌に載ってしまったことによって政権が揺るがす状態になりかねないと思ったのかその総理大臣は簡単にやめさせたのだ。とりあえず、政権を保つためにやった手段としかないのだ。
「世知辛い世の中ってのはこんなところにもあるのだろうかな。冷たい視線も伝わっているのだろうか。」
視線というのはただ目を合わすだけじゃないのだ。今やネットでも似たような現象というのは起こっているのだろうから。権力を手に入れるために政治家でもやっているのではないかとでも思ってしまうのだろうか。
「人を見下していい判断ができるとおごっている連中には見えないだろうか。」
三枝が思ったのは、あながち間違いではないと思ってしまうから。電話をかけた。
「もしもし、俺だ。」
「何処かのオレオレ詐欺でもしようとしているのか。」
「するわけないだろ。そのことをよく知っているのがお前だろう。」
冷たい言葉で言ってみると草間はそうだなといって笑っていた。
「それでなんだ?」
「少し気になったことがあったんだ。・・・あんなに嫌っていた父親の会社と提携していることが分かったんだ。それに殺された窪塚康がいたグループと別のグループの幹部が殺された事件があっただろ。」
「あったな。」
「そこに小関絵里はかかわりがある。ざっと考えて康の金づるになっていたと考えてもいいじゃないか。」
彼の言葉には過去に起きた事件は無縁だとは言えないと思った。




