言葉の家
「もし匿名の電話があったとして信用するか?それも誰かわからない状態で・・・。」
草間が言っているのは最もであるが、洋一に母親の話をされたら鵜呑みにしてしまう可能性があるのだ。父親である権現のみが警察に圧力をかけたことを知っている。
「子供は真相を知りたがっていたと聞いたから、むしろ首を突っ込むことが考えられるからな。」
「そうなのか。なら、食いつくだろうな。洋一といっても社長はお飾りに過ぎなかったことが聴いていてわかったから。」
草間は悶々と悩んでいそうであったのだ。鈴木卓と詩織の存在が増えたうえに窪塚康の死が関係ないとは言えないこともわかっているだろう。三枝にとっても考え深いところに行ってしまう。この事件は見えないつながりが存在してしまう。
「上条さんはどうしている?あの人なら事件を結び付けようとしていないか。」
「正解だよ。上条さんは結び付けるのはいいが証拠がないだの言って管理官とかもうんざりしているけど、他の捜査員の人は知っているから否定していないんだよ。お前の情報で信憑性が増して上の連中は抵抗できなくなってしまっている。」
「忘れかけていたけど、高橋清吾という康の兄が一時期だけ高橋製薬にいたらしい。あと、高橋紘一という兄もいて何処かの病院の医者になっていて高橋製薬とかなり強いつながりを持っているらしい。」
鈴木卓と詩織の当時の行動は全くもって探れない。学校で噂をたてたくらいでしかないだろうからだ。同級生は聞いていたのだ。それを鵜呑みにすることでいったん止めておくことで動きを見ることができそうだと判断して話さないことに決めた。
「捜査一課は動きっぱなしだよな。他の事件が起きればとなってくる。まぁ、高橋権現のことでマスコミが張り付いているから余計な事を言うなって釘を刺されているようだけど。失態を隠したところで何処かでわかるだけなんだよね。」
警視庁の周りにはマスコミが張り付いているので裏道から出ているのだが、いずればれてしまって話さざる負えない状況になると思っているらしい草間は上条にだけぼやいているのだという。不手際というのはあり得るのだから認めるのが筋だと。
「上条さんは言うんだよな。組織のためという坑口を使った自己保身だって。資料室で笑っていたよ。」
「いいそうだな。彼にとっては事件の被害者を思いやるほうが先で保身なんて安い小道具としか思っていないんじゃないのか。」
「そうだな。」
三枝が描いた警察そのもののようにしか思えなかった。




