点と円
橋倉の現状を知ることができたと思った。安いアパートに戻ってみても今日起きたことが立て続けであったこともあってか休まるものも休まらない。冷蔵庫の騒音も耳にうるさいくらい響いている。いやというほどであったが・・・。テレビをつけてみると高橋権現が殺されたとしてマスコミがホテルの前で騒いでいた。爆破事件ではなく、薬による殺しとなっている。服用してはならない方法によって起きた心臓発作であったのだ。薬の内容については警察は明かしていない。明かしたら自殺をする人が増えたら困ってしまうからだ。風呂に入る気にもなれず、こもって作品を作るにも何も思いついていない段階で書いたら余計な事を書いてしまいそうになってしまう。ソファにいるのがいい。窪塚康も死んだとなれば、高橋明子の事件を知っている人物は犯人だけになってしまう。そんなことを思っているうちに電話がけたたましくなった。
「もしもし。」
「草間か。どうしたんだ。」
「お前が高校生の時に撮った写真の中に子供の写真が混ざっていたのが気になったんだ。あの写真は何だ?」
草間の何時もとは違う問いただすような口調に少し驚いてしまった。確かに高校生の時に現場を歩いていた時に子供には感じないはじけていない、大人を憎み憎悪させた感じを思い出した。翳りを感じてしまうほど。
「あれは、たまたま撮った写真だよ。その写真がどうかしたか?」
「あれは鈴木卓と詩織であることが分かった。今日中にと思って虹の橋に行ったんだよ。写真はたまたまもっていて園長に聞いたら鈴木卓と詩織だと断言したうえに集合写真とか見たから確かだ。・・・今回の事件と10年前の事件はつながっているんだ。関係者が殺されている。」
警察は鈴木卓と詩織に数日中に会うことになっているのだといった。彼らは高橋製薬に就職していて、兄の卓は病院を中心に回る営業をしている。妹は秘書をしているのだと。
「就職したばかりに秘書か?」
「そうだ。不思議に思わないか。高卒でハンディキャップがある状態で秘書だぞ。秘書課の連中は社長が速い段階で人事に顔を出して彼女の秘書を要請したようだ。」
会社が決めたことに振り回されてしまうこともあるのだろうか。現場を見ていくのが大概なのだろうが・・・。
「社長っていうのが洋一だろ。何処かで聞いたのかな。じゃないと取らないし、秘書までにしないだろう。」
「だとすると匿名で電話をしたのが窪塚康だとつじつまが合うな。」
点と線があったとすれば一直線に言ってしまうのだろうか。




