はじける音
橋倉の話を聞いたときに少し昔を思い出した。三枝には本人から聞かされていないが似たような話を聞いた。草間が三枝が勝手に応募された小説が出された企画に出していたことを文芸部の奴から聞いたのだ。三枝が自らの意思で出さないこともわかっていたから何も言わなかったのだ。彼の作品は入賞することもなかったが明かさなかったことが考えるところだった。
「俺にも知り合いにいたんですよ。自分の意思で作品を出した奴が・・・。それも運が悪いことに俺が出されたところだったんです。」
「それは太刀打ちできないですよね。それなら喧嘩になったりしたんじゃないんですか?」
「なりませんよ。俺の性格的にそういうのに向いているのに、出さないことをよく知っている奴でしたからそいつから全く直接聞かされずに他の奴を介して聞いたんです。その時言っていたんです。俺の作品が広がってくれてよかったとか太刀打ちできないからとか言っていたようなんです。高校卒業するまで幾度となく出したようですけど・・・。」
大学を卒業してからは仕事柄出すことを許されないために手を付けていないだろうと思った。けど、今も何も変わりなく関係があることが話しているうちに驚きへと変わっていった。
「言わなかったのは出さないことを知っていたことと先生ってあんまり目立つことって好きじゃないのを知っているからこそですよ。それに作品を書いているところを眺めていたとしたら負けたとか思うじゃないんですかね。」
「確かに俺の書いているときを見ていたんですよ。写真とか近所の人の話とかをまとめたりしてましたからね。事件を解決するというよりか警察の不手際とかを見あぶったつもりだったのかもしれないです。」
書いた形が小説というものであっただけでやっていることはジャーナリストと同じだった。橋倉はそんなことは気にしていないだろう。
「それもあったから今回の対談の話が上がって来たりするんじゃないんですか?」
「ですかね。俺の罪悪感すら見あぶる親友っていうのがいるんですからね。困ったものです。」
三枝にとって草間の存在は高校の時から大切だったのだろうと思ってしまうのだ。警察に入って未解決事件ばかりを追う部署に望んで入ったと知った時のなんだかむなしい気持ちがよぎってしまってもいるのだ。
「橋倉さん、そういうことですから受けてください。・・・新しい小説の内容とかについては予定を教えてください。」
「わかりました。昭さんにもよろしくお伝えください。」
橋倉のはじけた声で消えた。




