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御伽噺  作者: 実嵐
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星の居座る世界

三枝が商店街に戻るとすぐに電車に乗り込んだ。予定していたことはできなかったが、収穫が多かった。殺された窪塚康は窪塚鉄工所の息子で高橋製薬にかかわっており、高橋明子の事件にとって切り離せない状態なのだ。彼が殺されたのは高橋洋一を殺した犯人に会って会話をした。脅したと仮定するほうがあっている。そして、虹の橋という養護施設へといった。鈴木卓と詩織の兄妹についても調べないとならないのだろうから。地下鉄で街中に入っていくのを感じるように人が増えて行った。人並みに紛れ込むことがあったのだろう。目的の駅に着くと彼は電話を持った。

「もしもし。」

「夜遅くにごめんなさい。」

「いえ。」

電話を受け取ったのは澄川書店の橋倉である。昭から受けた対談の話についてだ。

「小関絵里が受けるといっているのは本当ですか?」

「そうです。彼女自身も先生には興味があったようですから。高橋権現、父親が先に依頼があったことは知らせなかったんですよね。以前、かなり憤慨していたのを思い出したので・・・。」

「彼女は母親の事件の解決を望んだのに、父親が警察に圧力をかけてまで阻止したんです。兄妹は仲が良かったということですからね。高橋製薬も岐路に立っている状態なんですよね。」

澄川書店が広告を載せているというわけでもないが、時折乗っていたのを思い出した。薬に関するものだった気がする。

「はい、週刊誌の部門のほうは必至で調べているようですよ。面白いネタを見つけないと売り上げにつながらないことは事実ですから。ただ、ねつ造するのは勘弁してほしいですよ。全てそうだなんて思われたら嫌じゃないですか。作家さんの取材を無駄にしたなんてしたくないんです。」

漏れる言葉からは彼の誠実さを感じる。週刊誌はねつ造をしてしまうことがあるらしい。一時でも盛り上がればと思っているのを橋倉は感じているのか嫌なことだと思っている。

「橋倉さん、俺たちみたいな作家を大切にしてくれてありがとうございます。」

「いえいえ、これが仕事ですし、もともと本が好きなんです。学生時代に友達とのノリで賞に応募したことがあるんですよ。全く歯が立たなかったですけど、夢中になって書いたのを覚えてます。」

それから彼は全く違う会社に入ったが出版社から声をかけられることが起きて驚いたのだといった。当時はその会社が嫌だとも思っていなかったのだ。声をかけてくれた人と詳しく話すうちにやりたいと思ってやめたのだ。その心意気が座っている。

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