得難い理由
三枝は宇佐美の話を聞いていてあるところに引っかかった。
「あのー、社長さんって高橋製薬に就職したはずではなかったのですか?」
「えぇ、確かに就職していたそうですよ。工場の作業員だったみたいです。長くはいなかったそうです。大学に行きたいと気持ちの変化もあって働いていたらろくに勉強ができなくなってしまうのでね。」
そこから予備校に通ったのだ。バイトをして予備校の金も自分で出したのだといった。清吾という人間が分かった気がした。お人よしな部分と何処か真剣にやるためには切り捨てないとできない性格だと思った。
「弟さんに会ったことはありますか?」
「康君ね。あったことがあります。・・・長男とは関係が悪いから全くあっていないとか言っていたけど、高校生のころに不良グループにいたと聞いたこともあって不安に思ったんだよ。けど、中身は優しいんだよ。」
康が不良グループにいたことと紘一が医学部に受かったことと関係があるらしい。紘一が入った医学部というのは金がかかる。康はそのこともあって、父親からすでに鉄工所を継ぐようにという話が上がっていたらしい。康は継ぎたくないといったのだ。清吾に白羽の矢が立った時は自分のしたいことができると思ったのだという。康はそのころからバイトをしていてバイトの金が兄の学費に少し消えていったのだ。父親が鉄工所が赤字になったりしたときにはバイトの金をとられ、黒字になっても同じ行為が繰り返された。兄からは一言も感謝の言葉もなかった。バイトをやめてもっと儲かるバイトがあると誘われていったのが不良グループだった。その不良グループは別に詐欺とか行っているわけでもなかったのだ。不良グループのリーダーと思われた人物は若いうちに会社を経営している経営者だった。その会社の新たな社員として認められたのでバイトをしていた時よりも多く金をもらえた。
「そのリーダーが別の町の不良グループに目をつけられて喧嘩になってしまったんです。そこで相手がナイフをもっていて振りかざしていて止めるために行ったリーダーが誤って刺してしまったんです。」
「それじゃあ防衛の隅に起きた事件ということですか?」
「そうですよ。けど、警察も彼らを不良グループと決めつけて事件の結末を詳しく調べなかったようですよ。社長はそのことで怒っていましたよ。本当の不良グループかも見分けがつかないからってなんでも処理すればいいというものじゃないと。」
康のことで此処を出て行かざる負えなくなったのは警察が原因だったのだ。宇佐美にお礼を言って出て行った。出たときには空が問うのは青く見えた空は曇っていた。




