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御伽噺  作者: 実嵐
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寂しい声

おじさんは紘一について、康が開いた交流会で詳しく聞くことができたのだという。

「高橋製薬の営業を仲がいいらしいんだよ。そこでかなり有利な値段をつけて買っているんだってさ。その人は大学病院の経理を任されていることもあってよく会うんだってさ。」

紘一が担当しているのは消化器内科だといった。外科のようにメスを扱うばかりではないからわかっているのだといったのだそうだ。腕のいい医者として名をはせているのなら申し分ないと思ってしまうのだが・・・。

「その経理の人は窪塚先生が病院内で脅されているのを見たっていうもんだよなぁ。フリーライターだとか言っていたみたいで、窪塚先生に用があったから声をかけたらその人はそそくさとかえっていったとかね。」

「それってまさか・・・窪塚康じゃないんですか?彼自身、フリーライターといっていたのだとしたら。昔の恨みってところもあるんじゃないのかな?」

「弘樹、そうだと俺も思うぞ。人は金の事にかかわると態度が変わると聞くからな。」

大学病院の経理担当はたまたま見てしまったというのだ。何故、社長などが集まる交流会に彼がいたのかが分かりえないのだ。康が集めたわけでもないにしろ来るのだろうかと。

「その人どうして参加できたんですか?社長とかじゃああるまいし・・・。」

「それが頼んだ会社は社長を集めたそうなんだけど、康君がその人に招待状を出したと事後報告として伝えてきたのだといったんだって。今更、断ることもできないから受け入れたって。」

康自身が紘一の弱みを見つけ出そうとしたのかもしれない。おじさんから明かされる言葉は窪塚家という家の崩れた様を覗いているようでもあった。昭にこれで帰ると伝えると笑顔を見せた。昭は此処で写真を撮って帰るのだという。そのために野鳥の会のメンバーと会う約束があるのだといった。母は自由気ままにパートに行ったりしているのだとも付け加えた。商店街まで戻ると看板があることに気づいた。窪塚印刷と真新しいものが時代を示していた。矢印のあるほうに歩いてみた。虹の橋に行くのはキチンとアポを取ってからにしようと決めた。細い路地を行くと古びた窪塚鉄工所と書かれた工場が見えた。つぶすのにもお金がかかるために断念したのだろうと思った。その隣に窪塚印刷とあった。2階は事務所らしく、従業員が暇そうにしていた。

「おう、お客さんかい?」

そうだともいえないので口を濁すことにしたのだ。すると、がっかりしたような顔をしている。

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