縁と円
草間の電話に何かに対しておののくことがあった。
「もしもし。」
「お前の言っていた通りだったよ。ホテルの部屋に入ってみたら高橋権現が死んでいた。薬の服用を間違えたことで起こる心臓発作だった。奥さんと同じ死に方をしている。薬は何かまではわかっていないがな。」
草間の焦った言葉と語尾になるほどに納得していく様子があった。草間はホテルにいなかったらしく、捜査一課の知り合いが教えてくれたのだといった。捜査一課の人がいたのはロビーだけだったという。他の事件も重なってしまって捜査員を向けることができなかったのだ。他のところから応援を呼ぶ時間もなかった末の結末なのだと思ってしまう。
「それで有力な情報を得た。鈴木卓と詩織は高橋明子の家にいた。同級生の母親から聞いたところによると学校で事件の話をしたときに詩織はよそよそしかったみたいだ。それに加えて、窪塚鉄工所の関係も彼らは知っている。高橋製薬社長と喧嘩になったのを見たと告げていた。」
「そうか。小関絵里と話がしたいんじゃないのか。警察がテリトリーを持つも疑われるから出版社としてくれよ。・・・また何かわかったら伝えるから。」
「有難う。」
「お礼を言うのは俺のほうだよ。高橋権現の死に対してもっと遅くなってしまった可能性があるからな。」
そういうと彼は切ってしまった。草間から伝えられたのは高橋権現が死んだことだ。それは紛れもない事実だ。鈴木卓と詩織はいったい何を求めているのだろうか。
「すいません。」
そういって三枝はテーブルの前の椅子に座った。彼女は何かを察したのか変にしゃしゃり出ることはしなかったのだ。むしろ、彼女はメモをテーブルの上においていた。達筆な字が書かれていたのだ。
「それは・・・虹の橋っていう養護施設の住所よ。さっきの話が聞こえてね、大切なんじゃないかって。私も虹の橋にボランティアで行っているのよ。あの子たちとかかわった贖罪というか何もできなかった罪を滅ぼすためにあの子にかかわった人は多く行っているの。だから、教えないのも可笑しいでしょ。」
彼女はもしかして彼らが就職した会社もわかっているのかもしれない。虹の橋で聞いたとかあるかもしれない。ないとは限らないこともわかっている。
「就職した会社ってわかりませんか?」
「施設長の人が言っていたのは確か・・・高橋製薬だって。養護施設出身っていうのもはばかれるようなところな感じがするのにそうじゃないって知ったのよ。」
髙橋製薬として働いているとすれば今回の事件に縁がないとは言えないのだ。




