名前
髙橋権現を呼び出すことを容易にしてしまっているのだ。犯人が爆弾を作れなくても可能になってしまっている。部屋によってはつながっていたりもするだろう。
「草間、俺は心配なんだけど・・・。」
「どうしてだよ。爆破されないかもしれないだぜ。交渉次第ではさ。」
「犯人に殺したい相手を会わせてどうするんだ?爆弾の製造の技術がなくても行えることになるんだぞ。・・・交渉からどれくらいたっている?」
彼に対して強めに聞くと少し黙ってしまっている。時間を考えているのだろうか。高橋製薬でごたごたが起こっていることを差し引けばとなってくるから。携帯から少し会話の声すらも漏れている。
「1時間くらいたっている。可笑しいよな。」
「誰か入るように催促しないのか。どうぜロビーとかフロントとか廊下で待機していたとしてもわからないぞ。動きがあった時には・・・。」
「そうだな。上条さんに言って伝えるよ。」
「そうしてくれ。」
いくらパソコンとかにも詳しくても爆弾を作る技術が伴っているとも限らない。そうなると呼び出して殺すほうが簡単になってくる。ホテルに呼び出しているのならそこそこいいホテルなのかもしれない。音が漏れないだろうし・・・。三枝は草間からの連絡がないことを祈った。何か起こった場合かけてくる可能性も無きにしも非ずという展開になってしまった。このまま、自宅へとかえってしまうのを躊躇したので
、窪塚康について調べてみてもいいかもしれないと思った。真っ先に見えるアパートに向かった。下の階から行くのが嫌なので知っていそうな人を探したいのだ。ただアパートの周りをうろつくと嫌悪感を抱かれてしまってはいけない。そう思ってアパートの近くの公園にいることにした。ベンチもかすれてしまっている。そこに座ると中年の女性が声をかけてきた。
「貴方、どうしたの?」
「初めまして、三枝弘樹といいます。」
そういうと驚いた顔を見せた。だが、すぐに笑顔を見せている。嘘をついてないような表情だ。
「まぁ、こんなところで有名人に会えるだなんて思っていなかったわ。そうだ。私の家に来てよ。」
勢いに押されるように彼女の自宅へといった。押し入りでもないからいいのだろう。彼女が言うには旦那を最近なくしてしまって暇を持て余していたんだという。床の間にお邪魔してテーブルを囲んだ。
「聞きたいことがあってきているんでしょ。」
「そうです。鈴木卓と詩織の件と窪塚康についてです。」
名前を聞いて嫌そうな顔を見せた。名前だけでも嫌な存在なのだ。




