伝達
おじさんのうまいコーヒーを飲み終えて、裏口から出た。裏口といっても聞こえのいい勝手口なのだ。そこから出られるのは三枝が作家であることをわかっていないとできないことだ。三枝は喫茶店を出た後に悩んだ。公園があったらと思ったが全く気配がなくて驚いてしまう。発展をしていけばきっと公園もできてくるのだろうから。細い道を見つけて壁に腰を掛けて電話をかけた。
「もしもし。」
「どうかしたのか。三枝がするってことは有力だな。」
草間は嬉しそうな声色を聞こえている。後ろが騒がしいのは警視庁内にいることがはっきりとわかってしまったのだ。
「この話は近所の人間を聞いたんだよ。高橋明子の事件の数か月後に児童相談所に自ら向かった子供がいたことが分かった。」
「名前は?」
「鈴木卓と詩織だ。養護施設は虹の橋だ。高橋明子が通っていたところだ。養護施設はたまたまだったとしてもだ。可笑しいと思わないか?」
家庭内が悪化したのではと草間が聴いてきたが全く悪化することはなかったことを伝えた。ずっと似た状況が続いていたのだ。それでも動いていなかった。
「それと1つあるんだよ。」
「へぇー、警察より優秀じゃんか。」
此処まで有力な情報は警察であっても口を閉ざすことも考えられるのだ。しかし、作家であって髙橋明子の事件を書いていたこともあって感心がある。口が堅いことは周知の上だからだ。
「高橋洋一に会いたがったフリーライターがいたらしい。そのライターが写真を売った。金の生る木といったほどだから事件にかかわる写真のはずだ。」
「いくらで売ったのかわかっているのか?」
「10だよ。10万円だよ。安いと思わないか?」
草間も安いと思ったのか不思議がっている。三枝にはある仮説が生まれたのだ。フリーライターは写真を売って社長の洋一が殺人を起こしたらそこで新たに脅すつもりだったのではないかと。寄生虫のように張り付く予定だったのだ。
「そいつの名前はわかるか?」
「わからないな。ただ何処かの企業の依頼を受けてきたみたいだから喫茶店を当たればわかるんじゃないか。」
「そこまでわかっていればこっちも動けるさ。」
「ただその人は以前此処に住んでいたらしいが、不良グループとかかわったことが分かって引っ越しをしたことまでわかっている。ある程度は特定できるんじゃないか。」
不良グループにいたと三枝が伝えると草間はうなったような声を上げた。それはフリーライターといえるのかとぶつくさといっている。小声であっても聞こえた。
「たぶん、高橋明子の事件の写真はたまたまであって一応肩書としてフリーライターと名乗って顔を合わせているのならきっとろくでもない人間かもしれないな。脅しを常としているとか・・・。」




