表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
御伽噺  作者: 実嵐
38/122

予見

意味深とも思える言葉を発していることもあったが大概にしておかないと思うのだ。三枝が出ようとすると店主の表情が何時も以上に穏やかだった。

「世間じゃ世知辛い世の中だというけどさ、捨てたもんじゃないと思うんだよ。災害が起こったとしても助けてくれる存在があるんだから。恨み節ばかり言ってもしょうがないけど。助けるのは最後は人でしかないんだから。」

そう言いかけるように言うのは高校生の時に訪れたときと変わらないのだ。ノイズのように嘘を畳みかける人もいるが、そうじゃない人のほうを探すほうが早いだろうから。インターネットが発達しただけでも良かった部分と違う部分にあふれてしまっているだろう。世の中から縁を切るのが難しいことを知っているのならうまく付き合っていくほうを選ぶだろう。

「そうですよね。泣き言を言っても嘆きごとを言っても救ってくれるのは人なんですよね。恨み、ねたみ、憎しみ、悲しみとかに沈んでしまうときがあるかもしれないですけど・・・。何時か雨はやむし、晴れるのを待っているのもいいかもしれないですね。」

「そうだろ。・・・そんな話をしていたらうまいコーヒーが冷めちゃったんじゃないのかな。」

いただきますといってコーヒーを飲んだ。冷えてもうまいものもあるのだ。それを思ったのだ。空を見つめていた時に思うのだ。今は曇っているかもしれない。雨が降っているかもしれない。だけど、最後にはありったけの光が降り注ぐ晴れとなるのだ。悲しみに嘆くときはあるのだ。見た目の復興というのは進んでも中身の復興は取り残されてしまうこともあるのだろう。それを取り除くのは人になってくる。口先だけではわからないのだ。政治家による自分たちの評価集めなど戯言でしかない。忘れて去っているのはきっと政治家のほうなのかもしれない。全ての現象を天災を言い訳をしてしまうほど愚かであっていいのかと。

「おじさんのコーヒーはうまいな。・・・10年前は何を飲んだかな?」

「当時は高校生だろうから、俺が入れたコーヒーにミルクを足したんじゃないのかな。」

そう聞いて思うのだ。世の中というのは混ざりあった人並みにおじけづくことなく進むのではなくて、助けを求めたりしていくことが正しいことじゃないかと。きれいごとをいくら並べても何かに変わる力をもっていないのだろうから。それなら動いてくれる人達のことを思うほうがいいのではないか。冷えた世界を恨むほどの力は破壊に導くことはあってはならないから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ