疑問とつなぎ
商店街であったらしいこの場所周辺は家に囲まれている。その細道には喫茶店がある。高校生の時に見つめて入った。野鳥の会のメンバーの人とは別れたときだった。静かに考える場所を探したのかもしれない。ビルの喧騒にやられているのかもしれないと自嘲するしかなかった。
「もしかして・・・弘樹君か?」
声がするほうへと振り向くとTシャツにエプロン姿の中年の男性が立っていた。その姿には見おぼえたがあった。
「おじさん、そうだよ。」
そう三枝が言うと男性が笑顔になった。彼から店に入って話すのはどうかと提案されたので甘えることにした。ゆく当てを求めてきたわけじゃない。情報が命取りになることをしているのだ。中に入ると来た時と全く同じだった。
「この店が長く続いたのは弘樹君のおかげだよ。小説で登場していることもあってね。客が尽きないんだ。今は来ていないけどね。休日となったら違うんだ。」
そういって彼は手際よくコーヒーを作っている。彼は脱サラをして喫茶店を開いたのだ。サラリーマンをしていたころに会社のごたごたに巻き込まれてしまって嫌気がさしてしまったらしい。それにそこの会社は輸入を主にしていたこともあって今もつながりが残っていて安く売ってもらっているらしい。その人達にとってはいい客として思ってくれているので顔を出してくれるのだといった。
「それでおじさんに聞きたいことがあるんだけど・・・。」
「なんだ。話せることなら貢献できるってわかっているから話すよ。」
コーヒーをカウンターに置いた。三枝はカウンターの椅子に座った。増築でもしたのかと思わせるほど高校生の時に来た時よりも席が増えていた。
「鈴木卓と詩織っていう子を知らない?」
「あぁ、知ってるよ。養護施設に行った子たちだろ。養護施設に行くとなった時期よりも俺は気になっているのは児童相談所に助けを求めた時期が気になるんだよ。」
「助けを求めた時期?」
その時期というのは高橋明子の事件が起きた2~3か月後のことだったという。小学校の教師がいくら言っても動かなかった児童相談所に自らが行ったとすれば困ったことになるので、事件に隠れて公になっていないのだといった。ただ地元じゃあ噂で広がるのもしょうがないことだった。
「だから、この辺の人は弘樹君が書いた小説を信じたんだよ。子供が面白半分でやったんじゃないかって。児童相談所がその子たちの家に行ったというならまだしも自分たちで行った分ね。」
疑問が生まれるのだといった。ただ誰も彼らが高橋明子の家に行ったところを見たことはないと思っている。




