見えた世界
店長は一人前ともなっていないのだ。都心部に置いておいて研修をするのが手っ取り早いところもあったろうが、徐々に繁華街になっていくときには都会に行かされるのだろう。
「前山とは小学校だけだったんですけど、高校生の時に此処らで有名になった小学生がいた気がしますよ。」
「なんで有名になったんですか?」
「貧しいわけじゃなくて・・・。育児放棄とギャンブル依存症、アルコール依存症とか訳ありの親に育てられたとかで何かの事件の時に子供が教師に言って養護施設とか行ったで話題になりましたよ。」
親が育児放棄をしているうえにアルコール依存症、ギャンブル依存症とか重なり合っているようにしか見えない。
「そうだ。思い出しました。母親が水商売をしていて男を作ったら家に寄りつかなくて、父親はサラリーマンだったみたいなんですよ。けど、ギャンブル依存症とアルコール依存症を発症して会社を辞めさせられて家にいっぱなしみたいでした。遊び歩いているから子供の世話なんてしなかったんじゃないんですか。子供の給食費代をギャンブルと酒にあてたとかであきれていたみたいですよ。」
彼は詳しい説明を受けた。それくらいの衝撃を与えたのだ。高校生であったとしても流されるだろうが、大人が陰口をたたけば広がることを証明しているようでもあった。
「名前とかわかったりします?あと、養護施設の名前とか・・・。」
「親とかが言っていた限りですけど、確か・・・鈴木・・・卓と詩織だったかな。・・・養護施設は高橋明子が行っていたとか言われていたんですよ。」
「虹の橋ですか?」
「そう、そんな名前を言っていたんですよ。」
店長が昔懐かしむような顔を張り付けているが、真剣に悩んでいるようであるのか。これだけの情報があれば養護施設に顔向けすることが可能になる。それを導いてくれたのだと思った。
「有難うございました。」
「こんな話でよかったんですか?俺は大した話をしたとは思っていないんですけど・・・。」
「十分な情報が聴けました。」
そういって裏から通れる道を教えてもらった。此処にはまだ調べていないことがあふれていると思った。書き並べたほかにも隠されたものにあふれている。きっと鈴木卓と詩織の両親はいなくなってしまっているだろう。此処まで詳しい話が知れ渡っているのならいる立場がなくなってしまうのだろうかとなる。父親と母親は離婚している可能性が高くなる。互いの行動を見て見ぬふりをしたこともあるだろうから。子供という要がいなくなったのなら離婚という可能性がある。




