始まりと期待
裏から急いできれいに着飾った新人の店長が現れた。スーツも何時のためようなのか少なからず安さを感じた。
「すみません。此処に有名人が訪れるとは思っていなくて・・・。此処でサイン会をなさりたいという要望を承りました。本部のほうにもキチンと伝えておきます。」
「有難うございます。久しぶりに訪れてみると町というのは変わっていくものですね。10年前に来た時はもっとすたれていくのを見ているようでしたけど・・・。」
店長も此処の出身で流れを知っているとしか思えない。うなずいているときのタイミングが良くわかると言いたげだ。店員は都会のほうから出てきたためにさっぱりわからないという顔を張り付けている。
「此処で話すのは何ですので、裏で話しませんか?・・・それじゃあ君、此処任せるよ。」
「わかりました。」
裏へと行くと少しばかりの在庫が見え隠れしていた。店長は近くから椅子を取ってきて2人で座った。コーヒーも添えている。店長の話を聞くと此処の小学校を出て都会に出て働きたいと思ったものの親の心配も起こってしまった。その時に仕事を探していた時に正社員を募集していたために受けたら通ったので親に報告したら喜んだのだという。
「この土地も捨てたものじゃないですね。此処は新たな開発にかかっているので・・・。ライフオブという会社には感謝をしないとなりません。」
「一時期都会に行っていたとは何処ですか?」
「大学に行っただけです。都内までなら立地もいいですからね。それでも此処にという願望があったので入社すると希望通りになったわけです。」
嘆くように言った。人手不足という問題と戦っていると。レジも無人になったりもしているそうなのだが、此処は高齢者の人が多いので無人レジのみにするには頼りないので人がいるレジも搭載している。器具はもっぱら会社が負担するので多くは考えない。
「書店ができてから人が来ます。前山商店さんとも仲良くやっていきたいんですよね。よく知ってますから。つけが聴くというのは強味だと思っているんです。スーパーじゃあ聞かないこともありますから。」
事情がある人にとっては大切なことと付け加えた。前山とは仲よくやっているというよりも今の店主と小学校の同級生なのだという。だが、小学校の時から交流があったわけではないので、一からのやり直しに近い。
「前山は正義感が強い人間ではないんですよ。だけど、人との関係をかなり気にしているんです。」
新たに知ったことだといった。




