言葉の交わし
「それで聞きたかったんだけどどうして今頃になって来たの?」
「あぁ、それは・・・出版社からキチンと調べないかといわれたのに加えて、警察に調べるのに加わっているんですよ。そのこともあって久しぶりに訪れるのがいいと思った次第です。」
「そうか。高橋洋一が殺されたから警察がごたごたに巻き込まる前に昔の事件を掘り起こしているってわけか。マスコミには言い訳ができるように。」
前山は理解したというような納得したような顔をした。この地では少なからず高橋明子という名は知れ渡ったのだ。警察の行動がどうなっているのか。マスコミに問われるのは目に見えているので、言い訳をするための行動である。
「言い訳をするつもりでしょうけど、俺の同級生はそのつもりはさらさらないです。上司にも会いましたが印象と違いましたね。その人が来てから未解決の事件が解決しているようですから安心してください。」
「三枝君に言われたら納得してしまうんだよなぁ。・・・この辺にさ、書店があるんだ。最近できたらしいんだけど、顔を出してもらえないかな。できればサイン会も開いてくれたら此処は繁盛するね。」
「わかりました。」
三枝はそう言って店を出た。趣のある建物が今は立っているが、のちに開発によって新しくなってしまうのだろう。前山の元気な姿にほっとしてしまった。前山が言うには最近、書店ができたといっていた。商店からそこまで遠くないので行きたいのだが、忙しくていけそうにないといっていた。定休日はあるのだが、突然開けてほしいといってくる人もいるので困っているのだ。頼る店がないが故の出来事だと思っている。チェーン店が軒並み訪れる時が迫っているので少しの辛抱だと思っているとも言っていた。街並みを眺めていると書店が現れた。少しさびれた町にミスマッチなほど真新しさが輝いていた。書店に入ると全くいいほど人気がない。本の積み上げている人物を見つけた。
「すいません。店長さんいらっしゃいますか?」
「あぁ、店長ですか。店長なら裏でこもってますよ。ところでどういった御用ですか?」
「俺は三枝弘樹といいます。町の方からサイン会をお願いされたのでそのことをお伝えに来た次第です。」
対応をしてくれた人物は急いで裏へといった。名前を聞いて驚いたのと同時に町の人からの依頼も伝わったのだ。胡坐をかくようなことをしてはいけないと思ったのだろう。走って行った彼は全くもって戻ってこなかった。数分もかかった。




