過疎と過密
前山のガタイのいい体格に加えて優しそうな笑みに癒されてしまう。三枝はコーヒーを受け取って飲んだ。
「それでも此処は変わろうとしているんだよ。・・・ライフオブとかいう会社が自社開発を行うための工場を作りたいといわれているらしいんだ。だから報われるのかね。それもライフオブの社長が高橋明子の娘だって聞いて驚いたよ。」
「じゃあ開発で高齢化もなくなるじゃないんですか?」
「それだと上がったりだけど。此処は通勤にはいいからな。以前の開発の分の残りがあるから。」
前山の少しさびた笑顔を見せられると何も言えなくなってしまう。さびた町を喜ぶ人など少ないだろう。悪事を行うためならまだしもだ。2人で話し込んでいると1人のおじいさんが入って来た。
「おう、珍しい客か。」
「そんなところですよ。覚えてないですか。三枝弘樹君。」
「あぁ、高校生の時に来たな。マスコミが騒がしかったこともあったからな。町を救おうとした恩人を町は何故、貢献したことに目をつむるのかね。」
懐かしむ様子と何処か過ぎ去った日々を思い出す形になってしまうのだろうか。そういうだけ言っておじいいさんはコーヒーを1本取った。
「宗助君。つけといてね。」
そういっててに持ったコーヒーを振って去っていった。あの事件が町を変えてしまったのは事実なのだ。喜ぶ人ばかりではないと思った。彼はメモを持ち出して開いた。先ほど訪れた人の専用のメモだといった。
「あの人は奥さんが認知症でね。それが分かったのはかなり悪化したときだったんだ。役所に相談しても一辺倒の返事しかかえって来なくてね。困り果てた末には福祉課が何とか言って今は施設にいるんだ。年金じゃあだめだからとか言ってコンビニができる話が上がっているからそこで働くみたいだ。」
そういう人のために前山はつけをよしとしているのだ。期間は自由としていて彼の場合は1週間らしい。自分で払いに来るからだ。奥さんと仲良く暮らす時間が減っていくのを悔やむ人ばかり。施設も少ないのに必要としている人間には回らないことが多いと彼は嘆いていた。身近で見ているが故なのだ。それを正すこともしないのだからとも思ってしまう。
「此処が活気があふれることは求めるけどほどほどっていうのがいいね。」
「そうですね。」
サービスとして受け取ったコーヒーが気づいたときに空になってしまった。前山は小さな商店を守ることと町を見守っているのだろう。三枝はそっと思う。現状を知る人物が必要だと。




