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御伽噺  作者: 実嵐
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気弱な審査員

橋倉は何処か安堵したような声を漏らしていた。高橋権現は自分の都合を言ってくることが多すぎて経済紙を担当している人も嫌気がさしてしまうのだといった。

「だから、高橋権現を担当できるのは光栄ですけど、振り回されることを承知の上じゃないとやっていけないんです。・・・作家さんとの対談も幾度とやってきましたけど、小説を書くために調べるじゃないですか。それのアポも確認をしないから最後は断れたりするんですよね。一企業の会長ってだけで・・・。」

澄川書店もうんざりしているようでもあった。橋倉はまだ橋渡しをする程度なので被害は少ないが担当になると1つでも間違えると乗り込んでくるのだという。そのことが原因でやめてしまった人もいるのだ。社長に陰口のように言ったりしたこともあったそうだが、社長が別の会社の人に裁かれることでもないと言い切ったので相手にしなくなったのだ。

「社長とはわだかまりがあるみたいで乗り込んだことが知られると困るといって今は、来なくなったみたいです。別の出版社の人に聞いたら乗り込んで従った社長がいたとも言っていました。小さな会社は特にだそうです。」

「その態度というのはどうにかなりませんか?俺もお会いしたいのはやまやまなんですけど。威圧的なのはいろいろとことを可笑しくするものですから。」

「できるだけとしか言えないです。そういうことなのでよろしくお願いします。」

苦笑いを浮かべたような声とつらい頼みにこたえたいとする声が葛藤しているようだった。切れた携帯を少しばかり眺めても変わらないのだ。高橋権現は立場を悪用しているとしか思えないのだ。つけていたパソコンの画面が暗くなっていた。キーボードを動かして明るくさせた。たまたま押せてしまったらしい記事を読んだ。父親にうんざりしてしまったのだという。兄は気弱い性格から父親には逆らうことなんてできないのだ。そのこともあって、社長に就任することになったのだ。知識もあって、社員も喜んだらしいが、逐一父親で退いたはずの会長がしゃしゃり出てきてしまうのだという。相談を受けて取締役会でどうにかできないかと相談したが相手にしてもらえなかったのだ。相手にしてもらえないどころかとたんに指示に従わなくなった。外部の取締役だけは指示や相談を受けてくれたらしい。その人物もいつの間にか変わってしまったのだ。兄はそのことを父親に問いただすと悪びれない態度でお前が失態をする前に救ってやったんだ、感謝しろ。土下座を迫ったと。兄は土下座はせずに弁護士で訴えていた。会社を変えるために・・・。

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