書き出し
草間から聞かされている話をようやくすると未解決事件を1つでも解決すれば立場が変わるといわれているのだ。今回の事件が起きて髙橋洋一が殺されたとなると昔の話を掘り起こされてしまう。マスコミ対策といっても過言ではない。上条は心ばかりか少し疲れたような顔をしている。
「今、警視庁が動き出しているのなら逆手にとって動くのはどうですかって先輩に言ったんだよ。そしたら、自殺に処理したかったからあまりにも証拠も残っていないって言われたから。一番、近くにいた俺なら三枝の資料をバカにすることもないし、真実が分かったほうがいいと思っただけだよ。」
「そう。俺も出版社から言われたんだ。息抜きとして調べてみないかって。それが本当の真実かどうかも解明されていない今、答えを出すときが来たと思ったんだ。」
三枝は手に包まれたグラスをぐっと握った。上条は居心地がいいのか悪いのかもわからないくらいに目が泳いでいる。上条は何だかんだ言って未解決事件を捨てきれないのだろう。
「実は俺・・・。この事件に携わっていたんだ。まだ、捜査一課のままでね。現場は自殺といってもいいくらいきれいだった。俺が少し引っかかったのは養護施設との約束だったんだ。自殺する前日に行くといっている。もし、気持ちが変わったのなら行かないというのが筋だろと思ったんだ。まぁ、他の奴らは気にしかなかったから俺だけ取り残された。そしたら・・・。」
上条にはとんでもない小説が発売されることになった。自殺と思われていた事件が他殺であるといっているのだ。腑に落ちる内容であったので必ず何処かで調べたのではないかと思った。上条はこの作家に会うことできっと事実を見つけてくれる手助けになると思った。三枝の小説が出る度に買い、サイン会に赴くことで人柄もよく分かった。純粋に調べただけなのだと。
「俺は授賞式に言った言葉で貴方の作品が取り巻くものを感じました。」
子供の遊びでなんか書いた作品じゃないですし、この作品は自殺と決めつける警察への警告も込めたつもりですと堂々と高校の制服を着ながら言ったのだ。警察の決断があらゆる人の人生を決めてしまうのだと。冤罪にも重罪にもなったりする。
「それでこの資料を貸していただけるんですか?」
「えぇ、俺は事件のことを書かれてあったら残しているので参考になると思います。この事件は思い入れが違うんですよ。小説を書いているつもりじゃなかった推理をしているようで・・・。」
三枝の思いを伝えた。




