部外者ともいえぬ
マスコミに騒がれてもなお全くもって態度を変えなかったことで家族に疑惑の眼が向けられていた。そのこともあって髙橋製薬は一時期全くといって程新製品を出さなかった。殺されるなどといった妙な噂が何処からかともなく浮かんでは消えてを繰り返していたからだ。消費者がそんなことを言われた製薬会社にとっては元も子もないのでということだったらしい。今はそんな噂がないとは断言できないまでも少なくなった気がする。資料を見ていると当時の思い出と事件を追った経緯を思い出した。
「おぅ、待ったか?」
「草間、元気そうでなりよりだよ。」
三枝の姿を見た草間は満面の笑みで対応する。隣の男性は中年の小太りという感じだ。だが、会ったことはないとは思っていない。電話口で言っていたからだ。サイン会に訪れていると。彼は三枝の顔を覗き込むようにしていた。
「草間、どうして三枝先生と簡単に会えるんだ。お前、もしかして・・・。」
「俺は高校の時の文芸部の仲間があの事件に詳しいからと伝えただけです。それが三枝なんですよ。」
中年の男性は理解できないのか首をかしげている。テーブルの前で突っ立ているのも何かと思われるので2人は三枝の向かいに座った。
「先輩は三枝の作品を読んでいるんですよね。デビュー作の題材が警察関係者まで広がった理由をもいだしたらわかりますよ。・・・どんな警察よりも中は調べられないにしても、外はキチンと調べてますから。」
草間はちょうど作品を書いているときにばったり会ったことがあった。そこでじっくりと見た後に驚いた顔をした。警察の情けない姿だとも思っているのだろう。
「あぁ、思い出した。デビュー作の『森の証人』はあの事件が基本になっていると受賞式の時に言っていたな。それでですか。・・・俺は警視庁捜査一課の上条といいます。」
「上条さんはサイン会に何時も来てくださっていますよね。何処であっても・・・。」
「お恥ずかしい限りですが・・・。そのこともあって一応は捜査一課とつけられていますが、後半がありまして・・・。」
「未解決事件部と・・・。まぁ、窓際の部署でして・・・。」
未解決事件部というのは時効がなくなったのでそれで解決する事件が必要だと形ばかりの部署ができたのだろう。草間に至っては刑事部長に直談判をしてまで入ったつわものだと上条は言って笑った。刑事部長は未解決事件部に入るのを拒んだという。それくらい腕があるらしいが、交番の歴も少し長いこともあって見回りを得意にしているという。




