困惑の真実
三枝は車から降りると受付へと向かっていった。受付の女性は何処かあどけなさを含んでいるようにも思えた。
「すいません。営業課の鈴木さんと秘書課の鈴木さんを呼んでいただいてもよろしいですか?」
「アポは取っておられますか?」
「取ってはいません。ですが、緊急事態だとお伝えしていただければわかってもらえると思います。」
受付の女性は警戒心が解けないのか、三枝の顔をじっと睨みつけている。名前を問わないのであればそのやり方に従ったまでだ。受付の女性はマニュアル通りとも取れない行動をしているようである。
「お名前を言っていただけますか?」
「三枝弘樹です。隣の人は澄川書店の橋倉文明です。」
「わかりました。これからお呼びしますので少々お待ちください。」
彼女は受話器を持つと迷惑そうにして見つめていた。近くに椅子があるわけでもなかったので立って待つことにした。対応をしてくれた女性とは別の女性は暇そうにしているようだった。頻繁に人が行き来するわけでもなさそうだ。受話器をおろした。
「こちらに来るとのことです。営業課の鈴木が小さな会議室が開いていたので取ったとの報告がありましたので・・・。」
会議室での話を聞くことを望んだことになる。2人が来るとは思わない。来るとしたら営業課のほうだろう。少しだけ待っていると黒スーツを着こなした若い男性が現れた。三枝は1度コンビニの前であったことがある。
「すみません。突然、訪れてしまって・・・。」
「構いませんよ。俺も窪塚紘一の裁判で裁判に出たり言ったりするのが今の仕事ですから。詩織も待っていますから。」
彼に連れられて大きなビルに入り込んでいった。エレベーターも何処かガラス張りで豪華だった。ビルの階数も多いのだろう。半分よりかは少し高いところでエレベーターが止まった。彼の先導で会議室へと導かれている。ドアをノックすると女性の声がかかった。ドアを開けると少し大きく感じるような会議室だった。彼に言われた通り椅子に座ると彼女と彼の神妙な面持ちをしていた。目の前にはお茶がある。
「何時かこんな日が来ると思っていたんです。事件を明かすなら俺たちが小学生の時点でわかっている人がいいと思ったんです。今回の事件についても全て明かします。」
「有難うございます。」
橋倉は流れが読めない状態になっているようだ。
「橋倉さん、彼らが高橋明子さんの事件に一番かかわっていて・・・、そして犯人です。」
「先生、何を言っているかわかっているのですか?」
おいてしまった橋倉は困惑しかなかった。




