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御伽噺  作者: 実嵐
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影の中にあったもの

橋倉は車を運転しながら三枝のほうを見た。疲れているのはきっと三枝であって・・・。彼は隣で寝るように座っていた。

「橋倉さん、大変なことになりましたね。」

「それはそうですけど。先生のほうが疲れていないんですか?」

「疲れてませんよ。対談の予定がなくなってしまって出版社に迷惑をかけたという印象が強いです。俺なんてこれぽっちも何もやってません。だから、今回の事件を全て解決したかったんです。」

三枝は対談の話が上がってはなくなりを繰り返していることが心が痛んでしまうほどだった。それなのに何もできなかったことも・・・。橋倉はコンビニに寄ったのだ。彼は降りて少しの時間だけいなくなった。三枝はポケットの中に入っていたスマホを出した。ネットニュースを見てみると、小関絵里が逮捕されたこと、秘書も逮捕されたことが上がっていた。情報というのは早いものだと感心するしかなかった。ドアの音を聞いてみると橋倉がペットボトルのコーヒーを買ってきていた。

「先生の心配は及びません。出版社が迷惑をかけられたのは小関絵里のほうです。だから先生は迷惑などかけていません。」

「ですよね。俺は高橋明子の事件を解決したかったんです。高校の時からずっと・・・。けど、警察は高橋権現の言うことを聞く形となってうやむやになってしまった。」

三枝はそれを感じて理想の刑事像を作り上げることにした。少しでもそこに近づける人が生まれる人がいればと思った。ただの理想論でも言う人がいないと生まれないと知っていたから。

「それで警察を描いたんですね。良くも悪くもいい形になったと思っています。」

「それに影響された警察官初めて見ましたよ。・・・上条とか言っていた刑事は影響されたみたいです。草間は俺が最初に書いた刑事を目指したんだと思います。だから、未解決事件部とかいう見放されたような場所でも好んでやれるんだと思います。腕があるのに・・・。」

草間は小関を車に乗せる前に三枝のところに来たのだ。感謝を伝えてきた。高校の時からずっと言いたかったことなのだそうだ。家族そろって影響されたことも言っていたのだ。そんな話をしているうちに高橋製薬の大きなビルが近づいてきた。

「こりゃ大きいですね。」

「初めて来ますよ。・・・こんなところなかなか入れる場所じゃないですからね。本気出しますか。」

車の狭い車内の中で三枝はあくびをしたのちに背伸びをした。空気の入れ替えを兼ねて行ったがかなりすっきりした。

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