勘とデータ
草間と話していると歩いてるときも楽しむことができた。レンタルスタジオにつくとスタジオ内が何処か騒がしかった。スタッフに声をかけた。
「何があったんですか?」
「あれ、三枝さん。・・・何があったって。高坂とかいうライフオブの社長秘書が昔、人を殺したってこの場にいた警察官にいったんですよ。その警察の人も事情を聴きたかったみたいで、別の刑事みたいな人が来てその人を近くの警察署に連れて行ったんです。」
いきなり容疑者が上がったので場が騒然としているのだ。三枝の控え室に行くと上条がソファに座ったまま、コーヒーを飲んでいた。おかえりとほほ笑んでいるようだ。
「上条さん、高坂が吐いたって本当ですか?」
「草間、そうだ。高坂自身も悪をしていたころの行いがきれいになったわけでもないうえに脅されながら生きていたようだ。それで小関がいないうちにいったというところだ。高坂が全てしゃべるだろうな。窪塚康のいたグループは会社を経営していてそのリーダーは気絶をしていて高坂が殺してそのナイフを持たせたとか言っていた。」
小関が高坂を当時から操っていたのだ。高坂の立場は弱かったことも関わっていた。高坂の指紋も残っているとも言っているのだ。警察の間違えた判断が公に上がってしまう。上の処理能力が求められる。それが分かったことは冤罪だったことの証明でもある。
「小関の指示だからな。証明しようがないが、まぁ小関は吐くとは思えない。で・・・、三枝さん持っているんでしょ。物を。」
「わかっていたんですね。」
「刑事の勘と当時の品の鑑識に調べてほしいといったところとかね。」
彼はジャケットの胸ポケットからボイスレコーダーを出した。
「このレコーダーは小関が通っていた幼稚園から高校の同級生が同窓会の時に撮ったものです。かなりあっけらかんと明かしています。指紋とかも上がっていますから証拠となるでしょうね。」
上条に渡すと少し笑顔をにじませていた。捜査一課にいたときに胸につっかえるような事件でもあったのだろう。その事件を解決したがったとしか思えない。
「今回の事件を起こしたのは小関絵里じゃないからとわかっているんですね。」
「はい。高橋権現のいたホテルの部屋から出てきた缶コーヒーと10年前に起きた事件のジュースの缶が一致していますから。」
「やっぱり、三枝は全て見えていたんだな。」
草間は思った通りだとつぶやいた。差し入れとして入れたペットボトルを机に置いて自由にとってもらっているが、場が騒然として収まる気配はない。橋倉はスタッフをどうにかしているのだろうから。




