データの引用
「それにしても小説家っていう職も何にしても楽はないわな。」
「当たり前だろ。何処かに行っては波にのまれるかどうかになるだろうからな。」
三枝はコンビニにつくとリストに書かれている好みの飲み物を選んでいく。そこには丁寧に書かれているのがありがたかった。
「お前は対談があったりしたときに買いに行くのか?」
「行くさ。まぁ、お金は出版社が持つとか言ってくれるからそのままなんだけどな。それだけじゃないから。」
「知っているのか。お前が買いに行っているが出版社が補っているって。」
草間は少し間抜けな言い方をした。彼が言っていると何処か高校の時に戻っているような気がする。三枝はかごに沢山のペットボトルを入れた。代金を支払うときに店員が三枝に気づいたようだった。だが、後ろにも客が並んでいることに考慮してただ袋詰めに力を入れていた。ざっと20本くらいのペットボトルを買ったのだ。草間に半分をもってもらった。
「高校の時、こんな風に買い出しにいったよな。文化祭の時にな。文芸部って実質仕事もないから別にいなくてもいいのに顧問の先生がつけて宣伝くらいしろってうるさかったんだよな。」
店番をするにも本当の人数が分からず、来ているメンバーでやりくりすることになったのだろう。それで何度も繰り返すことになったのを下級生が嫌だと言い出してしまって順番を代わったこともあったのだ。
「文化祭といってもはじけたようにならなかったよな。そういえば・・・、お前って写真部にもいたよな。」
「あれか。写真部が入学当初に俺の親父が有名な写真家だって知って入れって強制的に入ったんだよ。それで入ったはいいが、幼いころからカメラをもっていたしとることは楽しかったから別によかったんだ。」
写真部もまた文芸部と似た状況だったのだ。写真部に入ったことによって自分のカメラをもっているとものによっては煙たがれることがわかっていたため、学校から一時的に支給という形で使っていた。そのカメラで撮った写真でまさかコンテストに送られているとも思わなかった。
「学校支給だと番号が振ってあるから誰が使っていたかわかっただろうな。」
「それだよ。写真部の顧問が緩くてな。コンテストに写真を出してもわからないと思ったんじゃないのか。それで俺の使っていたカメラから使われたんだ。」
そのコンテストの審査員に父である三枝昭が含まれていた。昭は弘樹の写真が使われているのではないかといって学校に問い合わせたところ、弘樹が使っていたカメラからデータが出てきて応募した子のカメラからは出てこなかった。




