要望に生み出す
話しているうちに時間が進む。一向に小関がやるといわない姿が目に見えた。会社をいくらきれいに見せたいからといって打ち合わせなしの企画に打ち合わせを要求している時点で間違えている。それでもわからないのだろう。
「これじゃあことも進まないな。全く経営者というのはこんなものなのかね。」
「そうとも思わないですけど・・・、此処まではないです。少しはわがまま言ったりするときはありますよ。けど全くといっていいほど動かないのは驚きです。」
三枝も体力を削られてしまうのであまり動かないのだ。質問を考えるほうもまた頭を使うのだから。スタッフも知っているため、そこまで要求しなかったりする。相手側も呼びに来ないところを見るとスタッフにいいたいことを言って三枝にはそれなりのことを言うつもりなのだろうか。ドアがノックされる音がした。声を出すと疲れ切った顔をしたスタッフが入って来た。
「先生、小関さんがやっと納得してくれました。これから衣装とかを相手側が選びたいとの要望があったので、これから知り合いのテナントショップに行ってきます。改めてつきましたらお伝えします。」
「わかりました。・・・此処まで進まなかったのは衣装の問題ですか?」
「えぇ、衣装を用意するか小関さんが来ているまま映るかどうかの話し合いをしていたんですが・・・。何度かその話をしに会社にいったのですが聞く耳を持たなかったので今日になって難癖を言い出してしまって時間がかかったわけです。・・・まぁ、再度時間がかかると思いますがよろしくお願いします。」
そういっておしゃれな服を着たスタッフは出て行った。経済雑誌はいわゆるファッション誌とも違うがこだわる人もいるので自分で着てくるとかの相談はし終わっているはずなのに相手にしなかった小関が悪いととらえるだろう。
「お前はそのままなのか?」
「違うよ。衣装に着替えるんだ。俺はおしゃれとかに興味がないから任せているんだよ。」
「そのほうが嬉しいものです。」
橋倉は三枝の言葉に少し笑みをこぼした。衣装を担当しているスタッフはこだわりを持っているのでそれを認められているような気がしているのだ。それが雑誌に載るとお店にも利益を生み出すこともわかっているのだ。遠巻きに生み出すことの大きさが彼にとってはわかってしまうのだろうから。
「衣装のスタッフ・・・大変だな。」
「小関絵里がファッションにこだわっているのならそれなりの要望を伝えておけばこんなことにならない。」




