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御伽噺  作者: 実嵐
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貪欲と欲望の塊

草間の父親が普段はいかない風景写真のところにたまたま見たことによって始まったのだ。まさか息子が恩人の息子と同じ高校に通って同じ部活でかかわるとは思っていなかった。

「お前の親父は入学式にも堂々と来てさ、多くは語らなかったようにしか見えなかったけどね。親父は踊りたらしいよ。入学式が終わった後に普通に接してほしいといっている姿を見たってさ。そこまでこだわることになるんだと改めて思ったらしい。」

「俺が私立の高校を受けなかった理由の1つだよ。きっと親父の名前は広がっていくのは目に見えていたから・・・。有名な写真家の息子だとわかったら芸術系のところに行くようになったし・・・。」

三枝が小学生の時はわけもわからずただ昭の個展にいったりもしていた。値段交渉をする場面でも高値を言うと断る風景を見ていた。お金持ちで金でものを言わせている人もわかっていた。その人は写真をそこまで見ることなくその場にあった写真に目をつけていて値段を交渉していく。それをよく思っていなかったのだ。父はよく言っていた。『人に刺さっていないと困るんだ。ただの風景を切り取ったに過ぎない写真も誰かに刺さるものになり替わる』と。その言葉を知っていた彼は自らが興味を持ったことを部活において生かそうとしたのだ。

「親父に感謝だよね。俺は金にも外聞にも興味がない。それゆえにこんな時には調べるんだよ。人に響くんだ。嘘偽りじゃないからね。」

「だから先生のお父さんに会った時に笑っていたんですね。苦労するのはいいことだとか言ってましたよ。お母さんはお父さんを見守って来たこともあって、静かに見守ることに徹しているようでした。」

「おふくろは親父の時でも信じ切っていたようです。親父の腕に鈍らないし、仕事熱心だったこともまた魅力だったようです。」

三枝の母親はこれといった特徴がなかったらしい。実家も普通の家庭に変わりなく・・・。それに貪欲な姿勢もあったとしても教えられたのは勤めていた会社だった。それでもなお何か足りないと思っていた時に町で小さな個展を開いていた父に会ったのだ。そこではコンテストで賞を受賞していながら安定しないので個展を開いたといってた人がいた。登山するにも危険がつきものなうえに写真集を発売したとしてもそこまで売れなかった。母にとっては忘れていた何かを取り戻してくれると思って通ったのだ。すると写真集が突然売れ出したのだ。父の腕が認められた瞬間だった。その時には2人は付き合っていたが、母は多くは望まなかったらしい。登山に上がってけがなくかえって来ることしかなかった。

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