うた(い)かた
虚無を語る詩は未だかつて無い
あるとしてもそれは最早虚無を語れてはいない
語ればそれは在るのだ。世にさすらう詩人はこの越えられない壁を前に苦悩しなくてはならない。そしてそこには宇宙がある。天空の彼方には結局は宇宙がある。よって宇宙に最も近いのは天空と死人なのだ。しかして天空に死人は居ない。宇宙は天空と虚無に挟まれた暗い路地のようなものだ。
詩人は死人にこう言った
あんたはどこへ行ったのだ
死人は詩人にこう言った
口にはできないところだよ
詩人はいやいやこう言った
それは虚無と言う場所かい
死人は黙ってこう言った
場所などない
時なんだ
新聞を広げ新型人工衛星の落下を伝える記事を見つける。椅子の肘掛けには飲み終えた缶コーヒーが6つ。
プロセニアム付きの空に目をやる。なるほど近くにいるとうるさいが、どこにでもある飛行機だ。
あぁ、別れた女を乗せて行ったんだっけなあ
…end
電車を降りて、「そーいや、あいつ何言ってたんだろ」
ふと、あなたの脳を横切ることができれば私は幸せです。
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