前夜
「それでいいんだね?」
「はい」
ミリアは真っ直ぐな瞳で、しっかりとした言葉でそう答えた。
覚悟の表れか唇はきゅっと結んでいた。
「じゃあ……」
(1時間前)
部屋に戻ると、ミリアがしっかりと椅子に腰かけたいた。
こちらをじっと見つめるその姿はリ○ちゃん人形みたいだ。
いつものならここで一言冗談を言ったりするのだが、
今は言わないほうが良いだろう。
ミリアは割りと冷やかされるのを嫌がるたちだ。
「決まったのかな?」
俺も真面目な顔に切り替えて、話を切り出す。
「はい」
ミリアも俺の気持ちを汲み取ったのか、しっかりと答えている。
まぁもう子供でもないのだ、これくらいは出来るだろう。
いや、今後のことを考えると出来てもらわないと困る。
絶対というわけではないが、
国民が民衆についてくるかは王の覚悟次第だと思う。
覚悟が伝わらなければ、中々真剣についてきてはくれないものだ。
覚悟と意思は違う。
後でミリアも分かるときがくるだろう。
「私は公爵の提案を受けようと思います」
やっぱりね。
まぁ確認みたいなものだ。
「公爵の提案では確実に国を建てられるとは言えません。
無理やり国を建てる分、円満に統治できるとも限りません。
それでも、
それでも私は自分の意思を曲げたくはありません。」
おお、予想の斜め上をいく素晴らしい答えでしたよ!
満点!満点をあげましょう!
ミリアはこんなに良い子に育ちました!
「分かった」
さぁ後はジジイを倒してミリアを夢に近づけるだけですよ。
終わったらご褒美かなにか欲しいですね。
ミリアに聞いてみると、
「無事に終わってからです」
やった!
やりました!
これで勝ち組確定です!
「では、今日はもう遅いですし、休みましょうか」
「そうだね」
明日は忙しくなる。
少しはゆっくり休んでもいいだろう。
大勝負の前に気負う必要もない。
その日の晩、
俺はミリアに感づかれないようにゆっくりと部屋を出た。
昼間に通った道を通り、
中庭にでる。
昼間と何ら変わることもなく噴水が吹き出していた。
あの変なババアがいないことも確認して、
噴水の縁をさわり、〝下に潜る″
『やっぱりあったか』
わざわざ昼間にあれだけの人物がいれば誰でも気づきそうなものだが、まぁ死角なのかね。
「これか」
思わず独り言を呟いてしまった。
なるほど、これは守りたくもなるね。
ま、精々使わせてもらうとしましょう。
「明日も早いしな。」
早めに戻るべきだろう。
こいつの調べも進めなきゃいけなそうだしな。
ということでやっぱり遅くなりましたが、
9話目です。
つぎはついにこのシリーズ始まって以来のバトルが始まります。
少し間が空くかもしれません。