当日
翌朝
チュンチュン
俺はベッドの中でゆっくりと目が覚めた。
長い夢を見ていたような気がする。
すごく、すごく長い夢の中で俺は一人の少女といた。
だが、
「やっぱり夢かぁ」
少し寂しいようなそんな……
「馬鹿なことやってないで早く起きてくださいお兄様。
今日は大事な日なんですから」
むっ、何を言う俺の迫真の演技を馬鹿にするな。
「ミリア、俺寂しいよ慰めて」
こういうときはミリアに慰めてもらうしかない。
「これで何回目ですか。いい加減聞き飽きました」
流石に何回も同じ手は通じないらしい。
昔は何回も慰めてくれてたのに、
こういうところは成長してほしく無かったような気がする。
まぁ実際大事な日であることは事実なので、
しっかりしないといけないのだが……
「もう、今日がどんなに大事な日か本当に分かってますか?」
少しプリプリした様子でミリアが聞いてくる。
こういう風に怒られると、新婚さんの気分になる。
ミリアと結婚……
「分かってるよ。今日はミリアとの結婚式だよね」
この後俺はヒリヒリする頬を押さえながら、非常に険悪なムードの朝食を食べるはめになった。
す、少し願望がでただけなんだからね!!
まぁ実際こういうことは慣れっこなのか朝食の後はミリアの機嫌も元に戻っていた。
ミリアいわく俺のことは良い意味でも悪い意味でも信用してるんだとか、
喜んで良いのか分からないな。
その後もミリアにいかに俺を信用している?のかを聞かされた。
本人も笑って話していたので、冗談だとは思うのだが。
しかし、そんな良い感じの雰囲気も、ドアをノックする音で終わりになった。
ミリアが一声かけると、メイドさんは『会談の準備が整いました。』と言ってイスラの部屋の前まで案内して、去っていった。
ここから先はあんな良い感じの雰囲気は訪れないだろう。
隣を見ると、ミリアが緊張した面持ちで胸に手を当てていた。
無理もない。
俺も昔からこういう大勝負をしてきたが、ここまで大きいものとなると、数えるほどしかない。
やべっ胃が痛くなってきた。
まぁこの世界にはキャ○ジンは無いからどうにもならないし、
「どうせ気にする余裕も無いしな」
その一言にミリアは気づいたか気づかなかったか。
そんな分かるはずもないことを少し気にしながら、
青年と少女の二人はケガをすることもないこの世で一番優しくて、優しくない戦場に足を踏み入れていった。
部屋の中には既にイスラとこの前案内してくれたメイドさんが待っていた。
「まぁ座ってくだされ。ミリア様、ジン」
イスラに促され大人しく席につく。
ミリアがイスラの正面で俺がその斜め後ろ辺りだ。
ほとんどの場合こういった交渉は一対一で行うのだが、
ミリアがまだ小さいのと余りにも素人過ぎるのでこういった形になっている。
この事は交渉前に俺から頼もうと思っていたのだが、思いがけなくイスラから提案されたものだった。
まぁ国を建てるか建てないかの交渉が余り一方的過ぎても話にならない。ならば俺が着いてきてでも納得のいく交渉をといったところだろう。
こういうところのせいで公爵止まりだ。などと言われてはいるが、俺はこういうとこがあるから公爵になったと考えている。
この辺に関しては尊敬もしている。
「では、先ずはミリアから質問の回答があるそうです。」
俺の音頭で交渉がはじまり、イスラの質問に対してミリアが回答する流れになった。
緊張した雰囲気が漂う。
メイドさんだけが雰囲気に飲まれたようにそわそわしている。
ミリアはたっぷり十秒ほど間をあけて、
「私はここクレル公爵領に国を建てたいと思っています。」
その言葉を聞いたイスラはゆっくりとお茶を口に含んで、
「それはジン君と出した結論ですかな?」
すぐさま質問を返した。
その目は先ほどと違い燃えたぎるような熱い目をしていた。
その場にいる全員を引き込んでしまいそうな目に誰もが一瞬怯んだが、ミリアは毅然と答えていた。
「いいえ。私一人で出した結論です」
真偽を確かめるようなイスラの視線がこちらに動く。
俺もそれに答えて黙って頷いた。
「なら、どうやって建てるつもりですかな?」
「えっと……それは……」
どうやらそこまでは余り考えていなかったらしい。
あんまり難しいことは考えられないのか、それとも発想が追い付いていなかったのか。
まぁ無理やり建てる何てことが異常だからな仕方ないのかもしれない。
しょうがない助け船を出すか。
「考えられる方法はひと……」
「お前には聞いてないぞ」
どうやら泥船だったらしい。ごめんねミリア、俺に造船技術は無かったよ。
ミリアも可愛そうな物を見るような目で見ている。
軽く予想はしていたとはいえ散々である。
すると、ミリアが考えがまとまったのかイスラに向かって話始めた。
「私は戦争が嫌いです」
「同感だな」
唐突に語り始めたミリアにイスラも同意する。
「人を使い人を殺す戦争が嫌いです。
全てを奪い尽くすまで終わらない戦争が嫌いです。
誰も幸せにしない戦争が嫌いです。
そして、
そんなものは必要ないと考えています」
「ミリア様のお考えには私も賛成です。しかし、戦争や争いが解決の手段として有効であることは変わらない。」
「いいえ」
イスラの反論をミリアがピシャリと切る。
ミリアのまとう雰囲気がガラリと変わったことに、
イスラの目が変わる。
これが、ミリアの持つ才覚。
俺がミリアに着いていく理由の一つ。
ここからは、ミリアのターン。
はい。やっぱり時間がかかりました。
次から予定を言うのは止めときます。
クオリティと時間が釣り合ってない件については……頑張ります……
今後ともよろしくお願いいたします。