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 昏い昏い、黒一色の闇の世界に私は居た。立っているのか、座っているのか、横になっているのか。

光が一切ない視界は当然のこと、何かに触れている感覚もない。今の自分の状態が全くわからない。


  >第一席『クロックハーツ』の魔力(マナ)を確認しました。これよりシステムの凍結を解除、及び権限を移行します。


 暗闇の中、聞こえてきたのは無機質な機械音声(システムボイス)――その声は、耳を通らずに脳へ直接響いた。

告げられた言葉はわかる。生まれ育った国の言葉なのだから。でも、意味まではわからない。システムとは一体、何のことだろう。

 首を傾げる(実際に動いたかどうかは不明だが)と、機械が起動するような音の後、黒を切り裂くように光が奔った。

白が辺りを染め上げて、徐々にその勢いを無くしていく。世界に数多の色が戻っていく。そこは、緑豊かな庭園だった。

頬を撫でるひんやりとした空気の発生源はすぐ傍の――変わった意匠が施された石造りの噴水には、陽光を反射して煌めく水が湛えられている。


「……冷たい」


 伸ばした手、水に潜らせた指からは確かな冷たさが伝わってくる。そのまま暫く手を水に浸していると、冷たさは痛みへと変わった。

夢オチという可能性が限りなく低くなったところで、噴水の水から手を引き抜くと改めて己の今いる場所を見渡す。

庭園の中心は噴水、そこから石畳の通路が計六本、外周へ向かって放射線状に伸びている。そしてそれぞれの通路の先には魔法陣が描かれていた。

ただのらくがきかもしれないけどたぶん、魔法陣。ここが何処だかさっぱりわからないし、それっぽいものでも全く違うものかもしれないし。解りやすく看板でもあればいいのに。

 そう思ったからか、突然、目の前に薄青色の半透明なウィンドウが現れた。驚きで目を丸める。ゲーム画面等でお馴染みのそれには、こう書かれていた。



  【火の島 転移ゲート】

 七つある浮遊島のひとつ、火の島への転移ゲート。しかし現在は火の神が不在のため、起動していない。



 転移ゲート。とても心惹かれるものだが、残念ながら動いていないらしい。他の六つの魔法陣も同様に起動していなかった。

火の神、水の神、風の神、地の神、光の神、闇の神。ウィンドウの説明により不在が確認出来た神様は六柱。そんなに神様が不在で大丈夫なのだろうか。



  【ラウィノ・アルカ】

 調律者たる神が滅び、無色の魔力が満ちる世界。緩やかに、しかし確実に滅びへ向かっている。



 新たに表示されたウィンドウ。世界の名を知ることで、私は漸く " 世界を視る " ことが出来た。感じるのは膨大な――でも有限の、色の無い魔力。

無色を指先で掬い上げて、 " 私の色である虹色 " へ染め上げる。ほんの一握り程度だった虹の煌めきは、次第にその輝きと体積を増していく。

 自身よりも長く伸びた七色の光を掴むとその光は散り、一本の杖が手中へ収まっていた。現れたウィンドウは、二つ。



  【時の鍵杖(クロノス・キー)

 時の神『ウィズ・クロックハーツ』の魔力で創られた神器(アーティファクト)



ひとつはたった今、創り出した杖のもの。そして、もう一方は。



  【ウィズ・クロックハーツ】

 異世界より降り立った、新たな時の神。



――そろそろ認めようと思う。これが夢でないのなら、ここは異世界だと。そして私は、この世界に現存する唯一の神になってしまったようだ。

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