いとしいひと。
苦手な方はバックでお願いします。
僕のまえから先輩がいなくなった。
秋になってちょっと寒くなってきたけれど、今日もまた屋上でいつもみたいにいっしょにお昼を食べるんだろうなって思ってたのに。
はじめはただの風邪なのかなって思った。だけど、いままで先輩が一週間も学校を休むことなんてなかった。
おかしいなって思った。
そんな先輩とは、昼休みは毎日いっしょだった。先輩の友達がいっしょだったこともあったし、二人だけのこともあった。いっしょに屋上で、購買のパンを食べたり、僕の作ったお弁当を食べたりした。
先輩は明るくて、クラスの人気者だった。だから、僕以外にもいっしょに食べるような友達はいっぱいいるはず。
なのに昼休みになったら、必ず「屋上で待ってるね」ってメールがきた。そんなメールを受けとるたびに、心があったかい気持ちになった。
その先輩が、僕のまえから姿を消した。
喧嘩したわけでもないのに、先輩と何日も合わない日はいままでになかった。メールも何度かしたけど、どれも先輩からの返事はこなかった。
二週間たってさすがに心配になった僕は、先輩のクラスへと足を伸ばしたのだった。
「すいません、葵良先輩いますか?」
先輩のクラスに行くのははじめてだった。先輩は三年にはやばいやつもいるから絶対来たらだめだよ、と言われていたので、行ったことはなかった。
「あ、ゆみちゃんじゃん!」
先輩の友達とはいっしょにお昼をたべたこともあったし、何回か遊んだこともあった。明るくて元気な梢先輩、クールで寡黙な智晴先輩(通称はる先輩)。まあとにかく、先輩のまわりには男女問わずたくさんの人がいた。
「梢先輩。あの、葵良先輩はどこですか?」
この人は僕をちゃんづけで呼ぶ。弓という名前のせいで、昔から女の子みたいな名前と言われて、よくからかわれた。高校でもそれはしょっちゅうで、無視していたらクラスに友達は一人もできなかったけど。それくらい言われ続けているから、もうめんどくさくなって僕はなにも言わなくなった。
「葵良?なに、ゆみちゃんは知らないの?」
「なんのことですか?なんのことだかさっぱり…」
先輩からはなにも聞いていない。先輩が学校に来なくなった前の日は先輩から誘われていっしょに帰ったけれど、いつものように「日野原くんじゃーね、ばいばい」って言われただけだった。
梢先輩は知っているのだろうか。先輩になにがあったのか。
「あいつ、言ってないのかよ。…あのね、ゆみちゃん。葵良は学校辞めたんだ。二週間前に」
「…え、せんぱいが?」
「うん、あいつ父親いなくてね。母親と二人暮らししてたんだけど、その母親も病気で倒れてさ。まあ、あいつ高校卒業したらここから出るって言ってたしな」
先輩が、きらせんぱいがいなくなった…?
そんなの、しんじられない。
涙がぽろぽろと、あふれる。
「ゆみちゃん、なんも知らなかったの?」
「…しら、ない。そんな、の、しらない」
せんぱいがもういないなんて。
もうせんぱいにあえないなんて。
そんなのしらない。
「…そっか、なんかごめんな」
梢先輩は僕にあやまった。横からはる先輩もやってきて、僕の涙をぬぐってくれた。
やっぱり、先輩の友達はやさしいひとたちだった。
「僕のほうこそ、すいません。先輩のことなんにも知らなくて…」
「仕方ないよ。あいつがなんも言わなかったんだからさ」
そう言って梢先輩は僕をなぐさめてくれた。
その日は先輩たちに誘われて、梢先輩とはる先輩と三人で帰った。
もうここに葵良先輩はいなかった。
***
あれからしばらくして、もうすっかり寒くなった。十二月になり、雪もぱらぱらと降ってきた。北海道の冬は寒いのだ。
結局、先輩に宛てたメールに返事がくることはなかった。前は毎日のように新着メールを確認していたけれど、もう返ってこない気がして開くことができなかった。
梢先輩とはる先輩は受験生だから、いっしょに帰ったりすることは少なくなった。もう屋上も開かなくなっていて、会うこともあまりなくなった。
そういえばだいぶまえになるけれど、二年になったころから僕に友達ができた。名前は名津という。ただ席がとなりだっただけだけれど、僕に友達ができたのは先輩のおかげだと思う。クラスの人気者だという先輩は、僕にいろいろ教えてくれた。
名津にお昼はずっと先輩と約束してるからいっしょは無理だけどと言ったら、「へー仲いい先輩がいるんだー、なんかいいねそーゆーの」と言ってくれた。元々名津は一人でいるのも好きなほうで、一人は楽だから好きと言った。
先輩が学校を辞めたことを名津に言うと、僕の話をちゃんと聞いてくれた。まあ、若干眠そうではあったけど(名津はそういうやつだ)。
悪いやつではないから、なんだかんだいって信頼していたりする。
ある日の放課後のことだ。
名津はめずらしく自分から僕に尋ねてきた。
「日野原はそのきら先輩?とかいう人のこと、どう思ってるの?」
僕の本名は日野原弓という。僕のまわりで僕のことをゆみちゃんと呼ばないのは、名津とはる先輩、そして葵良先輩だけだ。
いつもはぼーっとしている名津がそんなことを聞いてくるなんて、正直おどろいた。名津なら、聞いてくれるかもしれない。
近くの公園をベンチに座って、名津に期待しながら僕は口を開いた。
「先輩とは、一年のとき委員会でいっしょだったんだ」
***
一年生のとき、僕はクラスでだれもやりたがらなかった各クラス一人ずつの学祭実行委員を押しつけられた。
それが先輩と出会ったきっかけだった。
実行委員会の日に、となりに座った人から話しかけられた。それが葵良先輩だった。
はじめて見たときはかっこいい人だなあって思った。なにより先生以外の人と話したのは久しぶりだった。
そして先輩は明るくて、気さくでやさしい人だった。
「日野原弓くん、だよね?いつも図書室にいるよね。本、好きなの?」
最初はそんなことを聞かれて少しこわかった。それを察したのか先輩は、
「あ、おどろかせてごめんね?俺も本好きなんだ。よく図書室で本読んだり、サボったりしてるから君のこと見かけてて。友達なんかチャラチャラしてるお前には似合わねーってよくバカにされるけど。そいつの方がチャラいんだけどね」
そう言って、先輩は恥ずかしそうに笑った。
全然こわい人じゃないなあって、単純な僕はそう思った。
「あはは、僕も本好きです。普通にそう見えると思いますよ」
先輩ははじめて会ったときからクラスの中心にいるようなイメージだった。
僕とは正反対の、ひと。
「だよね、大丈夫なほうだと思うんだけどなあ。そーいや、俺は相馬葵良。仲良くしたいな、日野原くん。よろしくね」
それから委員会が終わっても先輩とよく話すようになった。場所は図書室だったり、中庭だったりいろいろ。
好きな本の話題で盛り上がったり、好きなものの話をしたり、先輩との時間はとても楽しいものだった。
ある日のことだ。
「そーだ、日野原くん。屋上、いかない?」
先輩に誘われた。なんで屋上なんだろうか、確か屋上は鍵がないと開かないはずだけど。そう思いながらも、僕は先輩に尋ねた。
「先輩、鍵持ってるんですか?」
屋上は普通立ち入り禁止だから、生徒が簡単に話を入れるようなところではない。入れる人もいるみたいだけど、極一部だけだ。
生徒会に入っているはずもない先輩がなんで鍵を持っているのだろうか。
「ああ、鍵?仲いいやつが持ってたから借りたんだ。どうしても日野原くんに、見せたくて」
先輩に誘われるがまま屋上へと足を伸ばす、放課後。
「見まわりにくるかもしれないから、少しだけだけど。すごい落ち着くから、日野原くんと来たくて」
先輩は屋上の鍵を空けた。
扉が開いて秋のあたたかい風が体をすりぬけるような、そんな感覚。
「どう、日野原くん?ここ、俺のオススメなんだ。学校ん中で一番好き」
柔らかく笑う、先輩。
この屋上で先輩をひとりじめしてるみたいだって、そんなことを思った。
そして空に浮かぶのは真っ白な雲と、きれいなオレンジ色の夕日だった。
「とても、きれいですね」
こんなのはじめてだった。
中学の屋上は完全なる立ち入り禁止で、入ることはできなかった。小学生のときはそもそも屋上の存在を知らなかった。
高校生になって、知った。
先輩と出会って、知った。
「うん、夕日きれいだよね。見せたかった、」
日野原くんに。
そう言って、先輩はまた笑う。
ほんとうにこの世界に、ふたりしかいないみたいだ。
先輩と僕の、ふたりきり。
どうなってしまうんだろう。
「ありがとうございます。すごくきれい…」
「よかった…。日野原くん、先生くるとやばいからそろそろ帰ろっか」
夕日と先輩に見惚れていると、先輩に呼ばれていたことに気づいた。
僕ははっ、となってあわてて返事をした。
それから、昼休みは毎日屋上にくるようになった。いつも先輩が鍵を空けて、地面に寝ころんでいた。
お弁当を持ってきていない先輩に、僕は購買でパンを買って行った(ちゃんとお金は返してもらった)。先輩はいちごみるくメロンパンが好きだった。たまに僕がお弁当を作って持っていったこともあった。
どちらを渡しても、先輩は「うまい」って言って食べてくれた。それがすごく、うれしかった。
たまに先輩は友達を連れてきてくれた。はじめはとても緊張していたのだけれど、梢先輩は明るくて話しやすい人で、はる先輩はマイペースでクールな人だったから、だんだん話せるようになってきた。
放課後に遊びに連れて行ってくれたこともあった。
ゲームセンターに行ったんだけど、先輩がすごくゲームうまくてびっくりした。僕の苦手なUFOキャッチャーでもぬいぐるみとかをこれでもかというほどに、とって僕や先輩たちにあげたりまわりの知らない人にあげたりしていた。
それからカラオケにも行った。梢先輩がすっごい音痴で、みんなで爆笑した。そしたら「ゆみちゃん、後輩のくせにひどい!」っていって拗ねた。先輩はやっぱり歌もそこそこうまくてすごいなーって思った。僕も歌ったけど別に普通だったし、はる先輩に関してはずっと寝ていたから悪ふざけをして、先輩たちは顔に落書きをした。あとで先輩たちはしばらくはる先輩に口を聞いてもらえなくなっていたけど。
それから、いろんなことがあった。梢先輩ん家でゲームしたり、トランプしたり、パーティしたり、全部先輩がやろうって言ってくれたことだ。どれもがすごく楽しくて、はじめてのことばかりだったからうれしかった。
先輩たちは僕にも修学旅行のお土産を買ってきてくれたり、たくさんの話をしてくれた。
先輩たちが三年生になってもそれは変わらずよくいっしょにかえったり、先輩たちとお祭りに行ったりもした。花火大会にも行った。バーンって大音量で鳴る花火は、おおきくてきれいで、ずっとおぼえてる。
それから、それから…。
先輩が、いなくなった。
はじめは信じられなくて、学校にきてないのは風邪ひいたからなんだろうなって思ってた。
でもメールしても返事こなくて、すごく心配になって先輩のクラスまで行って、梢先輩に聞いたら、先輩は学校辞めたって聞いた。
それまでなんにも知らなかった。先輩もなんにも言わなかった。
先輩は、僕になにも言ってくれなかった。
言う必要がなかったのかもしれない。
僕は別に知らなくていいことだったのかもしれない。
僕のことは、なんでも聞いてきたのに自分のことになるといつも笑ってごまかした。それが、先輩だった。
言いたくはなかったんだろう。僕なんかに。僕なんかただの後輩だし、先輩も興味があっただけなんだろう。
僕がずっと独りでいたから、話しかけたくなっただけだったんだろう。僕がきっと先輩とは違うから、先輩は暇つぶしの相手が欲しかったんだろう。たまたま先輩の前に現れたのが僕ってだけで、ほんとうはだれでも…、いやちがう。そんなのぼくがいやだ。
せんぱいといっしょにいたのは紛れもなくぼくなのに、それはいやだ。
せんぱいはなんでぼくになにもいってくれなかったの、ぼくはせんぱいのことが大切で、ぼくに話しかけてくれたひとだったから、すごくうれしくて、ぼくはせんぱいのことが、きっと、だいすきだったんだろう。
そうじゃなきゃこんなに涙はあふれない。こんなに悲しいきもちにならない。せんぱいのかおやこえ、ぜんぶ思いだすだけで、すごく、むねがくるしいきもちになる。
せんぱい、せんぱい、だいすきだよ。ずっと、ずっと、だいすき。ぼくのたいせつな、いとしいひと。
***
「日野原は、きら先輩のことがだいすきなんだね」
名津はずっと僕の話を聞いていてくれた。涙でぐしゃぐしゃになった僕の顔を、自分のマフラーでぬぐってくれた。
僕ってば男のくせにすっごいなきむし。これもぜんぶ、せんぱいのせいだよ…。
「…うん、だいすきなんだ。すっごくだいすき。ありがとう、なづ…」
すこし心が楽になった気がした。
「…日野原は、どうしたいの?きら先輩へのきもち」
どうするって、どうやって?
もう伝えることもかなわない。
先輩がどこに行ってしまったのかも、僕は知らない。梢先輩に聞いたら、すごい田舎だって言ってた。明確な場所は知らないって。
「このまま、日野原のなかにあるきもちはずっと閉じ込めておくの?」
そんなのもったいないよ?
正直名津がこんなことを言うなんて思わなかった。いつもゆるゆるで、だらーってしてるのに。いまはすごくかっこいい。
「きら先輩に会いにいけたらいいのにね。そしたら、なにか変わるかもしれない。かえられたらいいのにね」
こんな運命も。なにもかもすべて。
せんぱいがいなくなってしまったこともぜんぶなかったことにしたい。
ずっととなりで、笑っていてほしかった。
せんぱい、せんぱい。
知らなかった、こんなきもち。
せんぱいに出会って知った。
気づいたのがいなくなってからだったけど。
すき、だいすき。
せんぱい、せんぱい、だいすき。
あふれてとまらない、せんぱいとの思い出にむねがまたくるしくなる。
ありがとう、せんぱい。僕と出会ってくれて、ありがとう。話しかけてくれて、ありがとう。仲よくしてくれて、ありがとう。
ありがとう、ありがとう。
こんなんじゃ、たりないね。
「うん。だけど、いままではせんぱいとの距離が近すぎて気づくこともできなかった。だから、気づけてよかったなって思う」
「伝えたり、しないの?いつかは」
「せんぱいにきらわれたくないよ。僕も、せんぱいも、男どうし。おんなのこじゃ、ない」
また涙が。ばかだな、僕も。自分が言った言葉にかなしくなる。
「ふふ、日野原らしいね。いいんじゃない?それも、わるくないよ」
そうかな…?
それから、ずっとふたりでベンチに座っていた。
なにもせずたがいにじっとして、ただ、ぱらぱらと降ってきた雪を見ていた。
それは一生伝えることなく雪のようにとけてきえていく、僕のせんぱいへの恋心みたいだった。
***
桜がひらく。北海道のお花見日和はちょうど五月ごろ。
今年もようやく春がやってきたようだ。
僕は高校を卒業して、五年がたつ。
地元を離れず、大学へ進学し就職を決めた僕は、社会人になっていた。
僕は、会社の営業部に配属された。口下手な部類に入る僕は、不安で不安で仕方なかったけれど、高校時代からの親友である名津も先輩である梢先輩やはる先輩だって、僕のことを応援してくれた。
一ヶ月たったいまでは、割となれてきたと思う。
まだ、先輩のことはわすれられない。僕のなかには先輩という存在が大きすぎて、告白されて付き合うことになってもあまり長続きすることはなかった。
夏になれば、北海道も暑くなった。休みの日に、仕事仲間と海に行った。先輩たちと来たきりだった。
職場の人はみんないい人で、僕もそれなりにやっていけている。
先輩との思い出をそれで上書きしようとしたけれど、無理だった。もう、わかってしまった。だからもういいと、思った。無理にわすれようとするひつようもないなあって思った。
秋になった。またあたたかい季節になった。ふいに、思い立って自分の母校に行きたくなった。
先輩のいなくなってしまった季節に、あの夕日を見たくなった。
今日は平日だったけれど、僕は夕方であがれる日だった。通学路だったなー、懐かしいと思って車を走らせる。
学校についた。車を停めて、来客者玄関のインターホンを押した。
「おお、日野原じゃないか。久しぶりだな」
懐かしい先生が出てきた。久しぶりですね、と言って中へ入る。なにも変わってなかった。
運動部の元気な声、吹奏楽部の楽器を演奏する音、すべてがなつかしい。
まるで、あのころに戻ったみたいだ。
僕は階段を駆け上がった。もしかしたら、いまも先輩みたいな人が屋上にいて、鍵が空いているかもしれないという淡い期待を抱きながら。
屋上へ続くこの階段に登ったのは何回目だろうと、わかるはずもないことを考えながら、扉をみつけた。
「あ、空いてる」
扉を押すと空いているのがわかった。
前にゆっくりと押した。
秋の風を全身に浴びて、あったかいきもちになった。
あたりまえだが先客がいたようで、その人は地面に寝ころんでいた。
着ていたのは制服ではなかったから、いまはこんなことをする教師がいるのかと思いながら、空を見る。
目の前にはやっぱり、きれいな夕日。
「きれいだなあ…」
あのころみたいに夕日に見惚れながら先輩のことを思い出す。
すると、後ろから声をかけられた。
「…日野原くん?」
「え、せんぱい…?」
声が先輩のだったからびっくりして後ろを振り向いた。
「なんで、日野原くんがいるの…?」
そこには、白衣に身をつつんだ先輩がいた。
そんなの僕が聞きたいくらいだ。どうして先輩がここにいるの、と。
「先輩こそ…、なんで」
ぽろって涙が一粒、こぼれ落ちた。
「日野原くん…、」
先輩は僕の前まできて、僕をぎゅって抱きしめた。
「ごめん、ごめんね」
いまさらあやまったってなにも、ないよ。おそいよ。子どもみたいなことを考えている自分がいやになる。
「日野原くん、ごめんね…。ほんとはあの日、最後にいっしょに帰った日に言うつもりだったけど、言えなかった…」
いまさらそんなやさしい目で見ないで。せんぱいへのきもちがあふれるから。だめだよ。
「…はい」
「日野原くん、きもちわるいかもしれないけど、俺は日野原くんが好きなんだ。ずっと、好きなんだ」
え、いま、なんて…。
「学校辞めなきゃならなかったのも、ずっと言わなきゃって思ってた。だけど、日野原くんが大切で、よけいな心配させたくなかった。俺の事情に、日野原くんをまきこみたくなかった。ごめん、好きになって、ごめんね」
せんぱいの抱きしめる力がぎゅっとつよくなる。
「なんで、あやまるんですか…。僕も、せんぱいのこと…すっ、すきなのに、だいすきなのに…」
また涙が止まらなくなった。これもきっとせんぱいのせいなんだろう。
「…ひのはらくん、」
「せっせんぱいが勝手にいなくなるから、ぼくはせんぱいのことばっかり考えて、メール送っても返事こないし、きらわれちゃったのかなって、」
「…そんなのぜったいにあるわけないじゃん、こんなに大好きなのに、」
ふたりでぎゅっと抱きしめあった。
「…ひのはらくん、あいにきてくれて、ありがとう」
せんぱいとふたりではじめて夕日を見た日を思い出した。
あの日も今日みたいに晴れていた。
「あのね、きらせんぱい…ぼくもここがだいすきですよ。だってせんぱいのことを、」
すきだなあ、って思った場所だから。
おわり
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ひらがなが多く読みづらくてすいません。しかも無駄に長いです。
初めてBLを投稿してみましたが、どうでしたでしょうか。
感想などいただけると嬉しいです。