序幕 幽霊はいない
高校生探偵というのをご存知だろうか。
現代ではお祖父様の名前に勝手にかけたり、または怪しい薬を飲んで縮んで小学生に戻ったり、または探偵のおじさんを慕い伝説の名探偵が残した学校とかに入学したりとそんなものだろう。
だが、これは全てフィクション。偽物だ。本物の高校生探偵なんてものはどこにもいない。
しかし、おかしな話だが実はこれも嘘だ。私は一人だけど、そういう風に呼ばれている人間を知っている。
なぜ、こんなに曖昧な表現なのか。それは噂だからだ。ただの噂、与太話、デマ。
私が通う天王寺高等学校、通称天高にはそういう風に噂される人間がいる。
なんでもその人は、部員がいないはずの将棋部部員であるとか。
なんでもその見た目は美少女のように美しいとか。
なんでもその人を見ると、記憶を消されるため噂にしかならないだとか。
全く持っておかしな話だと思う。
私ははっきり言ってこの手の話は信じない人間だ。
学校の怪談とか、都市伝説とかくだらない。
……別に怖いわけじゃない。
ご、ごほん。さて、これから私が綴るお話は私こと月夜野 千里と彼――嘘つき探偵――との天高で起こる奇妙な事件のお話である。