二之宮(7)
「……寝たか」
「大富豪で三回先に崇弥が勝てば寝る」と言うので、あっさり三連勝すると、「矢駄、矢駄、矢駄!」と駄々を捏ねるので、「私は王子の接吻で眠りにつきたいのです」と言う二之宮に望み通りキスをし、「もっと上手かっただろ?」と文句言うので、してやると、真っ赤な顔して、「上手すぎなんだよ!」と言って、やっとこさ寝てくれた。
「触り魔なのは狼だって…………………狼は狼。二之宮は二之宮だったな」
………チチチッ……チ…
漆黒の体に赤い瞳。左肩に留まった小鳥は綺麗な声で鳴いた。
「名前、何て言うんだ?」
………チチッ……チ…
首を傾げて鳴く。
「俺には鳥語分かんないよ。琉雨なら分かるかもだけど」
…―僕はセイ―…
脳に直接響く風のような声。まるで、二之宮が通信に使う蝶々のような。
「セイ…」
…―蓮は僕にセイと名付けたんだよ―…
小鳥は笑っているように見えた。
「何で喋れるんだ?」
…―僕はそうできているから。蓮が寂しくないように―…
…―そうできているからだよ―…
青い体に黒曜石のような瞳の鳥が鈴を転がすような声で鳴いて右肩に留まる。
…―僕はスイ。君は崇弥洸祈?清?どっち?―…
「セイとかぶるから洸祈で」
…―別にかぶっても。セイはあなたから。スイは紫水からとったんだから―…
『…紫水』
二之宮…狼がその昔寝言で言った言葉。
…―洸祈、蓮を独りにしないで―…
セイは頭を洸祈の頬に寄せる。
…―誰よりも脆くなっているのは蓮なんだ―…
セイは鳴く。泣く。
スイは頭を洸祈の頬に寄せる。
…―誰よりも愛に執着しているのは蓮だよ―…
スイは鳴く。泣く。
…―洸祈、蓮を独りにしないでよ―…
「君達は…」
「おい…べちゃくちゃ喋るな。籠に閉じ込めるよ」
二之宮だ。
振り返した熱に顔を赤くして体を起こした彼は小鳥達を睨む。
チチッ……チチ…
…………チッ…チチ…
二羽は互いに首を傾げると部屋の隅に飛んで行った。
「二之宮、起きちゃ駄目だ。一生治らないぞ」
「一生治らなくていい。清が居てくれるなら」
二之宮は清を望む。
「洸祈はいらないか…」
「何?」
「いや」
曖昧。
今まで二之宮は洸祈を欲した。
莫大な魔力を持つ崇弥洸祈を。
今では狼だけじゃない二之宮までもが清を欲しているようにしか思えない。
「二之宮、俺が必要か?」
「何言ってるの?必要に決まってるだろ?」
それは、
洸祈
清
どちらですか?
曖昧な態度は俺が狂う。