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啼く鳥の謳う物語  作者: フタトキ
思い出に… 【R15】
83/139

陽季(4)

「立ち話か。ま、これで琉雨ちゃんとの約束守れるな」

関係者用の通路を歩いていた陽季(はるき)は角に隠れた。

見れば由宇麻(ゆうま)の周りに人だかりができていた。談笑というよりも由宇麻は弄ばれていた。

そこから外れて…双灯(そうひ)が通路の壁に凭れて不機嫌そうにしている。

「何あれ」

理由を察知した陽季が笑いを堪えて言う。

「どうしたんだろ?」

ひょっこりと顔を出してその状況に洸祈(こうき)は首を傾げた。

「ほら、やよさん」

弥生(やよい)さん?…あぁ」

弥生は嫌がる由宇麻をからかう中にいた。

司野(しの)さんの顔はすげーよな」

「童顔?」

「童顔」

この構図、可愛い弟にお姉様方だ。

そこに双灯が入れるはずはなく、思い人が由宇麻を可愛いと連呼し、抱き付いて撫で回しているのだからああも不機嫌になるはずだ。

「陽季も撫でてもらいたいんだ」

「んなわけあるかよ」

「俺が撫でてやるよ」

「っ!洸祈、からかうな!」

ニヤニヤして髪を撫でる洸祈の手を陽季は払った。

「ここは通れないからホールの中通るぞ」

「司野いいなぁ。俺、年上のお姉さん好きなんだ」

マジかよ。

陽季に腕を引かれた洸祈はポツリと呟いた。

「あとで会ったらああなる。誰にも渡す気はないけどな」

昔の洸祈は可愛かった。

今の洸祈は可愛らしく男らしい。おまけに天然。

可愛いもの好きの月華鈴のお姉さん方だけじゃなくモテるだろう。本人は気付いていないようだが。

「陽季、恥ずかしげもなく…」

「行動で示せばいいわけ?」

と、陽季が洸祈の顎に手を掛ければ…

「よくない!」

顔を紅くした。



「でっかい!!」

ホールの正面ドアを開け放すと洸祈は子供のように目を輝かせた。

「俺も最初ここに来たとき思った」

「ここで陽季は…」

「凄いだろ?」

と、ついつい陽季も興奮気味に目を輝かせた。

「凄い!」

「今度こそ見に来いよ」

「一番近くで見てやるさ」

会話は駆けていくと思いきや。

「え?いや、一番近くは…ちょっと」

陽季が渋った。

「家のリビングでは集中出来てたのに?」

「あの時だって…」

平静を保つのがやっとだった。洸祈と二人きりだったら何しでかしていたか…

「陽季ー。どっちー?」

「へ?あっあぁ、右の通路真っ直ぐ行けば階段が見えるから、上がった先にある第6控え室だ」

「んー」

そう言って洸祈は舞台袖に消えた。

「…あ」

行ってしまった。

行かなきゃ。

が、

追い掛けようとして陽季は酷い吐き気に襲われて近くの座席に座った。

「うっ」

何が起きたんだ。

さっきまで何ともなかったのに。視界がぐるぐると回る。



「はにゃ~?だいじょーぶ?」


長い茶髪の女の子が見えた気がした。

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