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啼く鳥の謳う物語  作者: フタトキ
思い出に… 【R15】
81/139

陽季(2.5)

「ふあぁぁあ。眠いわ~」

由宇麻(ゆうま)は窓に凭れて外をぼんやりと眺める。

「眠いならついてくんなよ」

崇弥(たかや)ほっとけへんやろ?琉雨(るう)ちゃんも心配やし」

「あーあ、お邪魔虫め」

榎楠(かなん)ホールへと向かう双灯(そうひ)の運転する大型車。

助手席に座った陽季は後ろに乗り出した。

「それより何で俺が前で司野(しの)さんが洸祈(こうき)と一緒なわけ?」

「俺、崇弥の保護者やから」

「後ろがいい」

と、陽季(はるき)は靴を脱ぐと背凭れに足を掛けた。

「陽坊!後ろが見えねぇよ!」

双灯の制止を無視して陽季は後ろに行こうとする。

助手席の後ろでは洸祈が寝ている。陽季の進行先は洸祈だ。

「おいおい随分やんちゃなお子様やんけ」

由宇麻は冗談ではない陽季の行為に洸祈を自分の方に寄せて場所を開けてやる。陽季はそこに白い足を伸ばすと柔らかい体を駆使してそこに収まった。

「狭いから司野さん前に行ってよ」

「俺は夕霧(ゆうぎり)みたいな軟体動物やないんや」

頬を膨らますと端に座り直した。双灯がすみませんと謝る。

「でも、何で司野さんは俺のこと(あざな)で呼ぶわけ?」

「自分でそう名乗ったやん」

考える素振りをした陽季は洸祈の髪を弄りながらポツリと言った。

「陽季」

「?」

「俺の名前」

「呼んで欲しいん?」

双灯の忍び笑いがやけに響く。

「っ!呼んで欲しくない!」


「…鈍感」


陽季でも双灯でもない。勿論、由宇麻でもない。

「洸祈!」

「耳元でうるさいなー…琉雨がいないと気持ちよく寝れない」

薄目を開けた洸祈は腕を上げると抱き付いた。

由宇麻に…

「琉雨…」

「何でや!」

洸祈の手が上がり由宇麻の顔に到達した。首を撫で、頬を撫で、額を撫で、髪を撫で、元の場所へ。

「お帰り…司野」

優しい顔して呟く洸祈。

「何で崇弥はこんなに可愛いん?……陽季君」

と、ちゃっかり陽季の名前を呼ぶ。

必死に洸祈を由宇麻から引き剥がそうとしていた陽季は眉をひそめた。

「今までやろうとしては失敗に終わってたんやけど今なら出来そうな気がするんや」

「何が」

「崇弥をぎゅって抱き締めることが。俺、可愛いもん大好きなんや」

「抱き締めるな!」

陽季が目一杯の力で洸祈を引き剥がすと由宇麻を睨み付けた。由宇麻は「ケチ」と行って窓の外に視線を向けた。


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