はじまり
ヒトはその一生が短いから自らの存在理由を欲する。
なぜって?
生きる理由。生きている理由。
存在理由があれば日々を生きることが有意義に感じられるだろう?
だけどぼくらカミサマは存在理由を欲しない。
なぜって?
ぼくらは長生きだから。
長生きというよりぼくらは不老不死。
老いず死なず。
死なないは死ねないってこと。
ねぇ、そんなぼくらに存在理由なんて必要?
ぼくは気まぐれに一人の少年に近づいたんだ。
本当に気まぐれだったんだ。
ヒトは直ぐに死ぬ。だからぼくはヒトに近づかない。
感情があるぼくらは近づけば見送ることをしなければならない。
あぁ、死んでしまった。とぼくは亡骸を土には埋められない。
涙は絶えず頬を流れ、胸に抱いたそれが腐っても手放すことはできなくなる。
だからぼくは遠くからただただヒトの世界の発展を眺めてきた。
少年が泣いていた。
そいつは裏路地でしゃがみ込んで、上から見ているぼくが恥ずかしいくらいにぼろぼろと涙を流していた。
“ごめんなさい”と“ありがとう”の繰り返し。不思議だろう?
普通はどっちかだ。
謝罪か感謝か。
だからぼくは声をかけたんだ。
「こんにちは」
ぼくは先ず挨拶をしてみた。
そいつは真っ赤な瞳でぼくをじっと見つめるとふいっと背を向けた。
聞こえなかった?それとも…
「………………………………何?」
あっ無視してなかった。
「ぼくと友達になろうよ」
「友達?」
「そ、お友達」
お友達になろう?
なーんて言ってみたり。
そしたら少年は、
「………………いいけど?」
あらまぁ。
なんて軽いんだろう。
「ぼくは――って言うの」
ねぇ、キミの名前は?
「………………………………………………氷羽」
それが全ての始まり。