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啼く鳥の謳う物語  作者: フタトキ
パーティーの悪魔
34/139

パーティーの悪魔(2)

ガシャン!!!

何事もなく終わろうとしていたパーティーは突然やってきた武器持ちの集団によって壊された。

黒いスーツに黒のサングラス、拳銃を構える屈強な男達。

招待客達は悲鳴を上げ、騒然となる。


「レイラ!」

洸祈(こうき)は数メートル離れたレイラのもとに一目散に駆けた。

「大丈夫ですか!?」

「え…えぇ…」

レイラは他の客と違い悲鳴を上げてはいなかった。しかし、侵入者を見る彼女の身体は小さく震えていた。

他のボディーガードも各々の主人につき、落ち着かせようとする。


「動くな」

パーティー会場全体に放送が流れる。その威圧のある言葉にパーティー会場は一瞬で静かになった。

「先に言っとくが、外へ出ようなんて考えるなよ。仲間はその場にいる奴らだけじゃないからな」

安易な脅し言葉に招待客らは騒ぐ。

「………」

洸祈はレイラの影でそっと開けたカーテンの隙間から外を覗いた。

黒い影が周囲を囲んでいる。

その足元には衛兵達。

殺されていないことを願いつつ、次にパーティー会場に入って来た侵入者を観察した。

「中に15、外に20、計35ぐらいか…放送している奴らを合わせて40前後。武器は入るときに預けたからな」

「洸祈さん、戦うつもり?戦わずとも大人しくしていれば大丈夫よ」

レイラの判断は正しい。しかしそれは相手が金目当てか、ある特定人物が狙いの場合。

「レイラ、あの集団は大人しくしていても無駄ですよ。要求を呑んでもその場にいたものは消すんです。証拠隠滅ってやつですよ」

レイラの息は呑む。胸の前で合わせた手は固く握られていた。

「どうして知っているの?」

知らないはずなのだ。証拠隠滅をする集団を知っているはずがないのだ。

「一度彼奴らの仲間をぼっこぼっこにして刑務所に行かせたことがあるんです。そいつ下っぱだったんであんまり組織のこと聞き出せませんでしたけどね。…レイラはどうしたいですか?」

「どうって?」

「死ぬか生きるか」

震えていたレイラの身体が止まる。

「あなただけを連れて逃げ、ここにいる人は自力で逃げることを願うか。彼奴らから全員で逃げるか。前者はあなただけは絶対に生き残れる策。後者はあなたが生き残れるかは保証できない策です。むしろ、皆殺しにされるかもしれないです」

皆殺し。レイラは目を見開いて洸祈を見た。

「…あなたはどうしたいの?」

やっと出てきたその言葉は弱々しかった。

「俺は用心棒です」

その一言で洸祈の言いたいことが伝わる。レイラは身体を硬くした。

「―でも、ここの人達を放っていけないです。ここにいるのは世界を動かす人達。たとえ、媚を売っていても、不正をはたらいているとしても、いなくてはならない人達です。上を失えば下は生きていけなくなる。そしたら、また過去を繰り返すことになる。もっと多くの人達が死ぬことになるんです。それになにより…悲しむ人がいるから」

レイラには洸祈の心が泣いているように見えた。

「洸祈さんごめんなさい。私…」

もう震えていない…震えていられない。

自分の足で立たなくてはいけない。あの少年のように強く、強く。

「後者を選ぶわ」

顔を上げた洸祈はレイラの表情を見て、決心がついたことを悟った。

「分かりました。レイラ・リーンノース様」

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