帰路(7)
「どういたしましてや…リオ君」
『由宇麻、しっかりしてよ!約束だよ。帰ろう?』
「しっかり…してるで。だけどな…約束は守れへんのや…動けへん」
『だったらぼくに任せれば―』
「嫌や。ごめんな…もう…死にたいんや…」
『どうして!由宇麻!代わってよ!!!』
「約束…守る気ぃあらへん…のに…嘘吐いた…ごめんな…彩樹君、もう俺から…解放されて…いいんやで?」
『ぼくは好きで一緒にいるんだ!』
「俺を…生かしてくれて…ありがとう」
『ぼくは生かすなんてつもりで助けたんじゃない!一緒に生きたいから助けたんだ!!!!』
変わり果てた屋敷。
結界が消えた。
何かが起きたんだ。
「司野…どこだ?」
鉛色の空。
俺の最期の空だ。
彩樹君の声は聞こえない。
彩樹君が俺の中から消えたのか。俺の頭が機能を停止したのか。
どっちでもいい。
死ぬ覚悟はとっくの昔からできてた。
ミシリ。
屋根の歪んだ音。
それだけは妙に聞こえる。
「一緒に朽ちよう」
もう十分生きたやろ?
終わらせてもええやろ?
ミシリ。
「…もうええやろ?」
ミシリ。
「解放されてもええやろ?」
ミシリ。
………………………………………………ばきっ。
崇弥、会えて良かったで。
情けない姿やけど勘弁な。
由宇麻の体が崩れた屋根と共に堕ちた。