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啼く鳥の謳う物語  作者: フタトキ
旅行 【R15】
131/139

旅行(8.5)

部屋に戻った二之宮(にのみや)は布団を頭まで被って寝たのだった。




「や…だ……や……だ…っぅう…やだ…や…だ…」

二之宮は荒い呼吸を繰り返すと涙を流して呻き声をだす。

首を伸ばし、体を捻り、頭を振って、彼は何かから逃げようとする。

「二之宮!」

洸祈(こうき)は二之宮の体を揺さぶった。

それに二之宮は体を縮めて拒否反応をする。

「…うっ…………っぁあ!!!!!」

熱くも冷たくもない。ただ彼は大粒の涙を流して枕に拳を強く叩きつける。

「二之宮!?おいっ!!」

伸ばした洸祈の手のひらは、二之宮に弾かれた。

今の二之宮は何も分からなくなっている。

「にー!!!」

洸祈は一度離れたが、遊杏(ゆあん)は危険を顧みずに二之宮に抱き付く。

「僕に触るな!」

風が唸り彼の拳が震えた。

「杏ちゃん!!!!」

遊杏が殴られる。そう判断した琉雨(るう)は叫ぶ。

「杏!」

「やだ!にーってば!!!!」

遊杏は分かっていて離れようとしない。彼女は二之宮に抱き付き続ける。

「放せ!!!!!」


ヒュッ


拳が重力をもって遊杏に落ちていく。


「杏ちゃん!!危ないっ!!!!!!」


「杏、離れろ!」

洸祈は間一髪で二之宮の腕を掴むと片手で遊杏を暴れる彼から引き剥がした。

そして、琉雨に投げ捨てられる。

「あうわぁ!!!!」

「杏ちゃん!」

飛んできた遊杏を琉雨はどうにか受け止めると尻餅をついた。

「琉雨、杏を頼んだ」

「はい」





洸祈は額に汗を浮かべて暴れる二之宮と格闘して数分後、洸祈は片手で二之宮の腕を後ろで掴み、もう片手で口を押さえる。

琉雨も遊杏も不安そうに二之宮を見ていたが、洸祈が二之宮を拘束すると遊杏は一目散に二之宮に抱き付いた。

「にーっ!にーっ!」

必死に呼びかけるのに状態の変わらない二之宮に遊杏は泣き始めた。

「杏」

「にー」

「杏!」

これ以上騒がれたら隣に変に思われかねない。

「杏!!」

「…くぅちゃん」

ようやっとこさ洸祈の姿を捉えた遊杏は助けを乞う瞳を向ける。

「杏。お前、医学を少しはかじってんだろ?二之宮の身体どうだ?」

遊杏の瞳が波色に揺れる。

「壊れかけてる。少しのヒビをにーの心理が大きくしてる」

「そうか。やっぱりな」

洸祈は小さく息を吐く。

昨夜の宴会が響いたようだ。

(れん)さん、大丈夫なんですか?」

琉雨の率直な問いに遊杏の表情が暗くなる。

「大丈夫だ。ちょっと時間がかかるけど、杏と同じようにメンテナンスすれば治る」

「ホント!?」

遊杏は明るい表情を取り戻す。

「にーはもとに戻る?」

「あぁ」

洸祈は頷くが、表情は暗い。


「…こんなにも早くにメンテナンスが必要になるなんてな」


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