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啼く鳥の謳う物語  作者: フタトキ
旅行 【R15】
128/139

旅行(6.5)

「旦那様?」

「にー?」

…………………………………。

物音なし。

どうやら出掛けているようだ。

「どうしよう」

「にーの馬鹿ぁ!!ボクチャン達を閉め出すなんて!」

遊杏(ゆあん)はドアにへばりついて膨れっ面をする。琉雨(るう)は疲れ切った足を投げ出して床に座った。

「はう…」

早く寝たい。

琉雨は洸祈(こうき)達をただただ溜め息を吐いて待つ。

が、

「あ、鍵」

「ほへ?鍵ですか?」

うーんと唸る遊杏は託された鍵の存在に気付いて苦笑した。

「えへへ。忘れてた」

「もう」

強く怒れずに琉雨は立ち上がる。

がちゃ。

二人の少女は慣れきった部屋に駆け込む。そして、その場に荷を下ろして一息吐いた。

「タオルないし、お風呂だね」

「いいなあ。うーちゃん、ボクチャン達もお風呂いこーよー」

既に風呂の用意をする遊杏は、琉雨の手を引く。

「お部屋を空けたら泥棒さんが…」

「だから、鍵があるんだよ。いこっ」

疲れた体に風呂は素晴らしい。

琉雨は立ち上がった。

「うん。いこっ」



リヴァは空を仰いだ。

「うーん。温泉はいいなあ」

「私は慣れません…」

その隣でアクアは縮こまる。

「アレンもレインも逆上せて帰ってきたしな」

「ゆでダコって言うんですよね」

「ゆでダコだな」

ライルに抱えられた二人は完全に伸びていた。そして、熱いとうわごとのように繰り返し、アクアの団扇のお世話になっていた。

「あれ、誰かいる」

跳ねる茶髪の少女。

「本当ですね」

肩辺りで緩くウェーブする髪の少女。

「洸祈と(れん)とこの」

リヴァはじっと幼い体を見詰める。それに対して遊杏はリヴァをじっと見詰め返した。琉雨はというと怯えて遊杏の後ろに隠れる。

「ほへ…あの人、見てます」

「大丈夫だよ、うーちゃん」

「?」

首を傾げる琉雨。遊杏はにこりと笑い、波色に光る瞳を細めた。

「ね?リヴァ…シュ…ヴァ?ルツ…コー…ティ…うーん…めんどいからきょーちゃん!」

「きょーちゃん?」

リヴァ本人もキョトンとする渾名を琉雨は聞き返した。

「えーっとねぇ…―」

遊杏はにやりとして琉雨に耳打ちをする。すると、琉雨の顔がぼっと赤くなり、タオルを胸に強く抱いた。

「何て言ったんでしょうか?」

「さあなぁ」

「聞きたい?」

遊杏がお湯を被ると、リヴァの傍にばしゃりと入った。

「何で私の渾名はきょーちゃんなんだ?」

「教えてもいいけど、横の人は聞かない方がいいよ?」

横の人ことアクアは、分からずにリヴァを見る。

「アクア、どうする?」

「どうするって…」

「ま、いいよ。きょーちゃん、お耳貸してー」

リヴァは素直に小さな手で作ったメガホンに耳を当てた。




あのねぇ…



「…―杏ちゃん、ダメです!!!!」

と、琉雨が止めに入った時は遅く、リヴァはこほんとおもむろにに咳払いをした。

「リヴァさん、なんて言われたんですか?」

アクアの問いには一言、

「アクアはひぃちゃんだそうだ」

それだけ。

「杏ちゃん、ダメだよ。あんなこと言っちゃあ!」

「いーじゃん。分かりやすいもん」






その後、流石の琉雨でも、コツンと頭に拳をぶつけた。







リヴァ・シュヴァルツ・コーティーは長いから外見で……


いつになったらボクチャンの胸あんなにおっきくなるんだろうね。








「まだかなぁ…」

「遅すぎる」

洸祈は壁に凭れてため息を吐いた。

琉雨達はとっくに帰っているはずだ。

なのに開かない。いない。

なんで?

「迷子か!?」

「遊杏だよ?迷子はないね」

「だって…」

「どうしよ…誘拐!?」

「遊杏だよ?そこらのやつは返り討ちだって」

「―…だって!」

「ほら、帰ってきた」

二之宮の指差す先、二人の幼子は湯気を纏わせて歩いて来ていた。

「心配しすぎ」

「うっせ。自分だって浴衣握り締めてるくせに」

「怒ってるの」

ふくれっ面の二之宮は遊杏を睨み付けた。洸祈は本気の二之宮に首を傾げて少女達を見る。

「あぁ…」




仲良く歩く彼女の後ろには、



「リヴァさん…」


背後には黒いオーラだ。





「遊杏にはちゃんと常識を教え込む必要があるようだ」

「どうしてくれんだよ…」

青年二人は頭を抱え込んだ。

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