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啼く鳥の謳う物語  作者: フタトキ
短編2
116/139

条件(3)

『学校内で揉め事は起こすなと言っているだろ』

…―すみません―…

俺じゃない。あの馬鹿な先輩のせいだ。

『だから(さくら)の出来損ないとの接触も許可してやってるんだ』

…―すみません―…

許可される覚えはない。ちぃは俺の親友だ。

『あれしきの魔法に何故対応出来なかったんだ』

…―すみません―…

中野(なかの)をもう立てなくすれば良かったか?

『昔のトラウマごときで』

…―すみません―…

お前ら全員、丸焦げにしてもいいんだ。

『無理矢理越えさせてやろうか?』

…―すみません―…

ほっといてくれ。越えなくてもお前らぐらい簡単に。

『お前は部屋で大人しくしてろ』

…―すみません―…

言われなくても大人しくするさ。

『卒業すればいい。ただそれだけだ』

…―すみません―…

そのつもりだよ。金で動く軍の手駒に迷惑はかけない。

『契約、忘れるなよ』

…―すみません―…

契約?違うだろ。脅迫だろう。

『使えん奴め』

…―すみません―…

だったら今すぐ俺を解放しろよ。

『ここにいる間はちゃんと命令に従えよ』

…―すみません―…

俺に命令するな。



ガチャ

洸祈(こうき)は靴を乱暴に脱ぎ捨てると、明かりも付けずに暗い部屋に入った。

食器棚からグラスを掴んで蛇口から水を入れると、喉に流し込み、そのまま流しにグラスを置いてベッドに倒れ込む。

疼く右肩を左手で強く掴み、重い頭を枕に沈めた。



コンコン

控え目なノック。

「洸祈、私だ。帰ってるんだろ?」

知っている声。ベッドから降りようとした時、寒気を感じたので布団で体を包むとドアをゆっくり開けた。些か失礼だが、小さい頃からの知り合いだ。問題ないだろう。

「……………璃央(りおう)

「…飯」

一瞬だけ驚いた表情をすると、璃央はスーツ姿で売店の袋を洸祈の顔の高さまで上げた。

「いらない。食欲ない」

洸祈は首を振って俯く。

「なにも今日食べろなんて言ってないだろう。腹減ったら食べればいい」

そう言って強引に袋を洸祈に押し付ける。洸祈は布団から片手を出すと渋々袋を受け取った。

「有り難う。じゃあ」

洸祈が閉めかけたドアを璃央は止めた。

(あおい)千里(せんり)霧海(むかい)が夜中に寮を抜け出してここ訪ねようとしてた。翡翠(ひすい)寮は消灯時間以降の無断外出の罰則が厳しいからな。私が念入りに止めておいた」

「そう。璃央、明日も自宅出勤なのにこんな遅くまで待たせてごめんな」

「別に。1時から教授の実験に付き合わないといけないから帰れないんだ。休んでるとこ起こして悪かったな」

璃央はドアにつっかえさせていた腕を抜いた。

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