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啼く鳥の謳う物語  作者: フタトキ
短編2
106/139

親友

洸祈(こうき)(あおい)

「何?」

洸祈は振り返り、泥だらけの顔を傾ける。その隣で遊んでいた葵も手を止めて振り返る。

「今日、俺の先輩にあたる人の命日だからちょっと出掛ける。待てるか?」

「命日って?」

葵が首を傾げた。

「命が天へと逝った日だよ」

「じゃあその人死んじゃったの?」

その横であまりにも無表情で洸祈が顔を上げる。

「あぁ、去年な。あいつはいい奴だった。俺をいつも助けてくれた。…親友さ」

そう言うと洸祈と葵を両手で抱き寄せた。

「命日があるのはな。その人を忘れないためにあるんだ」

「忘れてるの?」

葵は腕から顔を出すと、小さな声で呟く。

「いや、俺は忘れてないよ。でも、その人の存在だけじゃなく過ちも忘れないためにあるんだ」

「過ち?」

顔を出した洸祈が尋ねた。

「俺達は忘れちゃいけないんだ柚里(ゆり)の死を……。お前達の泥がついちまった。着替えなきゃな」

立ち上がり際、洸祈と葵は悲しい顔をした父を見た気がした。

「あ!お前達も行くか?」

すると、父は先程とは違う明るい表情で言う。

「何で?」

「亡くなった俺の親友、柚里には千里(せんり)って言う名のお前達と同い年の息子がいるんだ。俺は柚里に千里を任された。で、どうだ?会いたくないか?」

洸祈と葵は顔を見合わせる。

「葵は?」

「洸祈は?」

二人は泥だらけの顔で示し合わせたように笑った。

『行く!』

「よし!」

父は二人の胴を掴んだ。二人の前に父の顔。父の前に二人の顔。

「まずはその顔を綺麗にしないとな」

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