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啼く鳥の謳う物語  作者: フタトキ
短編2
102/139

デート

3月中旬。水曜日。

用心屋の定休日を利用して今日は仕事に関係なく駅前ビルに俺は琉雨(るう)と訪れていた。

「旦那様と二人きりでお出掛けなんて久し振りですね~」

「二人きり…ね」

視界の隅にちらちらと映る人影。

人通り多い駅前でそれは普通かもしれないがその人影、動きが怪しい。

明らかに俺達をつけてきていた。

「旦那様?」

手を握って見上げてくる琉雨は怪訝な顔をした。俺の視線を追ってキョロキョロする。

「……やめたか」

「はひ?」

「行くぞ、琉雨」

首を傾げて口を半開きした琉雨の頭を俺は少し乱暴に撫でた。

「髪の毛ボサボサになりますぅ。せっかくレイラさんに結んでいただいたのに~」

ツインテールにした琉雨はぷくっと頬を膨らませる。

「可愛いよ」

ほら、頬を染めた琉雨は可愛い。



「で?何したいんだ?」

「映画見たいです!」

映画。

「今何やってるんだ?」

「刑事物です。旦那様が最近見てるシリーズもののドラマで片木(かたぎ)刑事と(かなで)さんの」

「へぇ。じゃあそれ見に行くか。はぐれるなよ」

「はひ!」

琉雨は俺の手を強く握る。結んだ柔らかな茶髪が俺のコートをかすった。






「親子に見える」

(あおい)は柱から身を乗り出す。

見えるのはツインテールの少女と焦げ茶の髪の青年。

「そうだね。あおー、あれ食べようよ」

「食べたいなら一人で食べてろ」

コートの裾を引く千里(せんり)の手を葵は払った。

そして、目の前に集中する。

「何で洸達の後つけるのさー。成績優秀、眉目秀麗。そんな崇弥(たかや)葵がストーカー紛いのことをするなんてね」

「間違いがないようにするため」

「間違いー?むしろ、あおの方がありそうだよ」

千里は軽やかにステップを踏むと、ストーカー紛いの前で止まってその頬を両方に思い切り引き伸ばした。

「ったぁ。千里!」

「大切な親友達のデートの邪魔しちゃいけないよ」

「………分かったよ。じゃあ、帰る」

素直に頷いた葵は踵を返す。

「その前におやつ。あれ食べたい」

通りに面したショーケースに並ぶのは様々なケーキやシュークリーム。

「だから食べたいなら一人で…」

が、

「食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい」

公衆の面前で千里は駄々をこね始めた。葵が狼狽えるのを楽しむようにその声を大きくしていく。

一人、二人、三人…増えていくクスクス笑いの真ん中に葵達は立たされた。

千里には羞恥なんて言葉はない。少なくとも今は。

「分かった。分かったから!一緒に食べるって」

「やった~」

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