第7章 午後1時、雷を伴う激論(俊太)
「それでは、今日の探究の時間は“お天気裁判”を行います」
佐藤先生の声が響いた瞬間、教室がざわついた。
黒板には大きく書かれた文字。
晴れ vs 雨
〜どちらが私たちの生活にとって“より良い天気”か〜
裁判形式での発表。
由美子が“晴れの代表”、俺が“雨の弁護人”。
クラスの20人が“裁判員”として、最後に評決を下す。
「では、まずは雨派の細川くんから発表をお願いします」
緊張で手が震えたけど、深呼吸して前に出た。
スライドの1枚目には、こう書いた。
「雨は、静かな応援団」
「みんな、雨って聞くと、どんなイメージがありますか? 濡れる、じめじめ、うっとうしい…そんな声が多いと思います」
「でも、雨がなかったら、どうなるでしょう?」
スライドをめくる。
水不足のニュース、干上がったダムの写真、カラカラの畑。
「雨は、命をつなぐ水をくれます。
植物を育て、川を満たし、私たちの生活を支えてくれてるんです」
次のスライドには、詩の一節。
「雨は、空の涙ではない。
地上にそっと触れる、優しい手のひらだ。」
「雨音には“1/fゆらぎ”というリズムがあって、心を落ち着ける効果があります。
それに、雨の日の匂い“ペトリコール”は、植物と土が生きてる証なんです」
クラスが静かになった。
誰かが、ふっと息をのむ音が聞こえた。
「雨は、ただの悪者じゃない。
誰にも気づかれなくても、静かに、優しく、世界を支えてる。
そんな存在が、僕は好きです」
最後のスライドには、虹の写真。
その下に、こう書いた。
「雨があるから、虹が出る」
発表を終えて席に戻ると、由美子と目が合った。
彼女は、少し驚いたような、でも優しい顔をしていた。




