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第5章 翌朝6時、弱い雨、風を伴う(俊太)
目が覚めたら、また雨だった。
カーテンのすき間から見える空は、どこまでも灰色。
でも、昨日よりちょっとだけ、優しく感じた。
「雨って、静かに降るときが一番きれいだな」
そんなことを思いながら、傘をさして登校した。
歩道の水たまりに、街路樹の葉っぱが浮かんでいた。
その葉っぱの上に、ぽつんと雨粒が落ちて、波紋が広がる。
なんだか、心の中にも同じような波紋が広がった。
図書室で、また“雨”を探した。
今度は、科学の本じゃなくて、詩集のコーナーへ。
『雨にまつわる詩』という薄い本を手に取る。
「雨は、空の涙ではない。
地上にそっと触れる、優しい手のひらだ。」
…なんか、いいな。
雨って、ただの水じゃないんだ。
誰かの気持ちみたいに、そっと降ってくる。
俺はノートに、思いついた言葉を書き始めた。
「雨は、静かな応援団」
「雨の日は、世界が耳をすます」
「雨があるから、虹が出る」
プレゼンは、理屈だけじゃなくて、気持ちも伝えたい。
雨の音、匂い、景色。
それを、ちゃんと届けたい。
由美子に勝ちたい。
でもそれ以上に、雨のことを、ちゃんと好きになってほしい。
発表対決まで、あと 3日




