第1章 午前9時、曇りのち沈黙(俊太)
窓の外は、灰色の空。
グラウンドの白線も、雨でにじんで見える。
ぽつ、ぽつ、と雨粒が窓ガラスを叩いていた。
「今日は一日雨か…天気悪いわね」
佐藤先生が、黒板に日付を書きながらぽつりとつぶやいた。
その瞬間、教室の空気が止まった。
探究の時間。生徒が議題を出すはずなのに、誰も何も言わない。
いつもなら、由美子が「じゃあ、宇宙の話とかどう?」って明るく言ってくれるのに、今日は静かだ。
俺は、なんとなく手を挙げた。
自分でも、なんで挙げたのかよくわからない。
ただ、先生の「天気悪いわね」って言葉が、ちょっと引っかかった。
「…なんで、雨って悪いんですか?」
声が、思ったより大きく響いた。
佐藤先生が振り返る。
クラスのみんなも、こっちを見た。
由美子も、ちょっと驚いた顔で俺を見てる。
「だって、雨って“恵みの雨”って言うじゃないですか。植物も喜ぶし、水不足も解消するし…」
言いながら、俺は焦っていた。
なんか、変なこと言ったかも。
「じゃあさ」
由美子が、にこっと笑った。
「晴れと雨、どっちがいいかって議論してみる? 晴れの方が絶対いいって思うけど」
その瞬間、教室がざわついた。
「それ面白そう」「裁判みたいにしようぜ」
男子が盛り上がり始める。
佐藤先生も、目を輝かせて言った。
「今回のテーマは『お天気裁判』にしましょう。晴れ派と雨派に分かれて、来週の探究で発表してもらいます」
気づいたら、俺は“雨の弁護人”になっていた。
由美子は“晴れの代表”。
クラスの人気者で、笑顔がまぶしい。
…やばい。勝てる気がしない。
でも、雨の名誉のために、俺は戦うしかない。
発表対決まで、あと 7日




