第3話 俺のスキル、ユニークすぎるだろ!
俺のステータス……
突っ込みどころがあり過ぎて大変だよ!!
【ステータス画面】
名前:ヒロシ・サトウ
年齢:19歳
「まず一つ目に、なんで俺の年齢が19歳になっているんだ!?」
「ほぉ、なるほど、気づいていなかったのだね? ほれ、私の鏡を貸してやろう。これで自分の顔を見てみなさい」
アル爺さんが手鏡を渡してきたので俺はそれを受け取り鏡を顔の前に持っていった。そして愕然とする。
「な、な、なんだこの顔は!? めちゃくちゃ若いぞ!! シワ一つ無くお肌もツルンツルン……アル爺さん、これって……?」
「うむ、異世界から召喚された者は稀に年齢操作が行われることがあってな……一つ言い忘れていたが異世界から召喚された者は全員『勇者候補』なので召喚中に戦闘可能な肉体や年齢に変化させるらしい。まぁ元から若い者はそのままの姿で召喚されるのだが、君は50歳だから若返ったということだな。ハハハ、30歳も若返れて良かったじゃないか」
素直に喜んでいいのか!? それに……
「召喚者が勇者候補って……お、俺が魔王と戦うっていうのですか!? そ、そんなの絶対に嫌ですよ!! それに何で俺みたいなオッサンが勇者候補としてこの世界に召喚されたのですか!?」
「ハハハ、私も召喚された側の人間だから召喚者に選ばれる条件は分からないのだ。これは各国の王や神官の中でも特別な役職の召喚師しか知らないはずだ。それと、あくまで君は勇者候補の一人なだけで他にも候補はたくさんいる。だから君が魔王と戦う確率はかなり低いので心配しなくてもいいと思うぞ」
「ほ、本当ですか!? 俺、昔からあまり運はよくない方なのですが……」
「ああ本当だ……多分だけど……」
「今、多分って言いませんでしたか!?」
「でもこの世界に召喚された召喚者は魔王との戦いは避けれたとしても職業は冒険者しか就けないという縛りがあってね……一応こんな老いぼれの私も元冒険者だからねぇ」
そ、そんな縛りがあるのか!?
俺に職業選択の自由はないっていうのかよ!?
はぁ、なんてこった……それにもう一つ驚いたのは……
「アル爺さんは元冒険者なんですか!? な、なるほどなぁ……どうりで冒険者ギルドに詳しい、良く見れば年齢のわりに凄く良い体型をされていると思いましたよ」
さすがドイツ人のアル爺さんだ。身長も高いもんな。少し背中が曲がっているけど背筋を伸ばしたら軽く190センチはあるだろう。
「この歳で良い体型と言ってもらえるなんて嬉しねぇ。でもヒロも筋肉質な良い体型をしているから冒険者にむいていると思うぞ」
俺は独り者で時間が有り余っていたから毎日ジム通いしていたし自宅にいても暇だから筋トレもやっていたので体型だけには自信があったし……それに学生時代は剣道部に所属していて優勝経験もあるくらいだからな……そ、それなのに今まで何で俺はモテなかったんだ!?
顔だってイケメンとは言わないがブサイクではないと思う。いや、どう考えても『普通』ではあるはずだ。それに会社での役職だって課長代理でって……役職は中途半端だな。ってことは俺の性格に問題があるのか? い、いや……それも違うだろう。友達もそれなりにいるし、部下達からも慕われていて……
もしかして俺が勝手に友達だと思っていたとか?
勝手に部下達に慕われていると思っていたとか?
ブルブルブル!!
「それでヒロよ、何か頭の中で色々と考えているみたいだが話を戻すぞ?」
「え? ああ、よろしくお願いします」
「ステータス画面のスキル欄を見てくれないか? ジョブ名と冒険者ランクに文字が入っているだろう? 召喚者以外は自分から冒険者登録をしない限りジョブ名やランク表示されないんだよ。ちなみにジョブはその人の適性を見て勝手に決められてしまうんだ」
『通常スキル』
●経験値:1
●ジョブ:剣士
・剣士レベル:2
●魔力値:10
・攻撃魔法:1
・防御魔法:1
・回復魔法:1
●武力値:20
・剣術:2
・格闘術:1
・射撃:1
●冒険者ランク:Z
「そうなんですね。俺のジョブは剣士かぁ……やはり剣道経験者ってのが影響しているのかな? でも……冒険者ランクがZってなんだよ……これって冒険者の中で一番最低ランクですよね?」
派遣冒険者のうえにランクが最低のZって……俺のプライドはズタズタじゃないか。
「そんなに落ち込むことは無い、ものは考えようだ。Zということはもうこれ以上落ちることは無く、これからは上がる一方なんだと思えばいいのだよ」
その理屈って神社でおみくじを引いて凶を引き当てた時に周りの人間ががフォローする時のセリフと同じだぞ。
そ、それにしてもだ。通常スキルは致し方ないとしても何だよ、このユニークスキルに表示しているふざけた能力は!?
『ユニークスキル』
・コミュ能力:10000
・ツッコミ:10000
・オヤジギャグ:5000
これじゃ俺は剣士よりも芸人向きじゃないか!!
「アル爺さん、このユニークなユニークスキルは……」
「うーん、おかしいぞ……もしかしてこれは……」
「ですよね? こんなユニークスキルあり得ないですよね!?」
「いや、ユニークスキルは何の問題もない。逆に凄く良いスキルだ。それを活かして頑張りたまえ」
これって良いユニークスキルなのかよ!?
これをどう活かせっていうんだ!?
「おかしいのは魔力値と武力値だ。あまりにも低すぎるということなんだ……こんなに低いのは私以来だよ!」
アル爺さんも召喚者の中ではあまり高い能力値じゃなかったのか?
「魔力値が10で武力値が20なんて……普通、召喚者の魔力値や武力値は少なくても50以上、稀に90前後の者もいるんだ。だから少し経験を積めば100に届き正規冒険者として活躍できるということなんだが……も、もしかすると君は……うーん、これは試す必要があるな……」
「試す? 何を試すのですか?」
「うーん、そうだなぁ……」
アル爺さんは顎を撫でながら考えている。しかし直ぐに何かひらめいたみたいで空に向かって指を差しながらこう言った。
「ヒロ、あの先ほどから我々を狙って頭上をグルグル飛び回っている魔物『ジラフライ』に向けて火炎魔法を放ってくれないか!?」
「えーっ!? 俺が火炎魔法をですか!? っていうか、俺そんな魔法を放てるんですか!? やり方全然分からないですよ!! そ、それに……」
あの羽を生やしたキリンに似た可愛らしい動物って『ジアフライ』っていう名前なんだぁ……ってか俺達を餌として狙っている魔物だったのかよ!?